裁判敗訴で「『幸福の科学』へお詫び」納得できぬと週刊文春4ページ反論
『週刊文春』に1ページ大のお詫びが載っている。幸福の科学の大川隆法氏が教祖の立場を利用して、宗教的儀式を口実に女性秘書に性的行為を強要していたという記事を平成24年7月19日号に掲載したが、事実に反していたのでお詫びするという文面だ。文藝春秋・松井清人社長と週刊文春・新谷学編集長名である。
だが、さすが週刊文春。次ページから4ページにわたって「本誌はなぜ『謝罪広告』を掲載するのか」という問題提起特集を掲載している。文藝春秋側は記事作成までの経緯を綴り、当事者には所在不明で取材できなかったが、十分に取材を尽くし教団側のコメントも掲載しているとしている。そして、この記事の掲載後に訴えてきたのは幸福の科学で大川教祖自身ではなく、その理由も「教団の名誉が毀損された」というものだから、<教団と大川氏は「別異の人格」であるため、原告である教団の名誉を毀損したことにはならない>と裁判で主張したという。
主張は一審では認められて文藝春秋側が勝訴したが、二審では記事の真実性は証明されておらず、「大川の全人格に対する社会的評価は幸福の科学と直結する」として名誉毀損を認め、文藝春秋側が敗訴している。1月23日、最高裁は文藝春秋の上告を認めない決定を下し、敗訴が決定した。
ここからが本題になる。週刊文春が掲載したお詫び広告の文面も見出し、活字の大きさも裁判所の指示通りで、「本誌の自発的意思で書かれたものではない」とし、謝罪広告の掲載命令は憲法19条が定める「思想および良心の自由」に反する、自発的意思に基づかない謝罪を国が強制するのはおかしいと問題提起しているのだ。
民法の権威と呼ばれた幾代通上智大学法学部教授の「ここまでの強制をすることは(略)、人間としての不遜の誹りを免れないと思う」という言葉を引用し、奥平康弘東大名誉教授の「媒体などが心から謝罪する気になって、自発的におこなう希な場合をのぞけば――『良心の自由』に違反すると思う」という言葉を引き、「民主主義的な国で裁判でお詫びを強制している国はほとんどありません」と田島泰彦上智大学教授にいわせている。
なぜそうなるかといえば、1956年、最高裁大法廷判決が「謝罪広告は憲法に違反しない」という判決を出したからだが、60年も前の判例だし、その時にも2人の裁判官が反対意見を述べているではないかと主張する。このことから、今の名誉毀損裁判や賠償額のおかしさへと及んでいくのだが、謝罪広告について、ここまで誌上で反論したものは、私が知る限りほとんどないのではないか。雑誌協会全体で議論を深め、法務省へ申し入れすべきだろう。
私の時代は謝罪広告の大きさや文字の指定などはなかったから、仕方なく謝罪するときも、できる限り小さく虫眼鏡で見ないとわからないぐらいの活字にして、風俗記事の下に入れたりしたものである。してみれば私には「良心」がなかったということになるのか。今は不自由な時代になったものだ。文藝春秋頑張れ!