外務省はシリアへの渡航を計画していたフリーカメラマンに、旅券法に基づきパスポートを返納させていたことがわかった。後藤健二さんらが「イスラム国」に殺害された昨日の今日、ということなのだろうが、報道の自由に手を突っ込む初のケースだ。いささか政治の臭いが感じられる。
警察官も同行―「自粛を要請したが応じなかった」
外務省の7日(2015年2月)の発表によると、旅券返納を命じられたのは新潟市の杉本祐一さん(58)で、今月27日からトルコ経由でシリアのクルド人難民キャンプなどを取材予定だった。外務省は渡航の自粛を説得したが応じなかったため、法的措置をとったとしている。
適用したのは旅券法19条で、「名義人の生命、身体又は財産の保護のために渡航を中止させる必要があると認められる場合」は返納を命令できると規定している。19条の適用は初めてだが、杉本さんによると、事前の自粛要請は警察も含め2度だった。旅券は7日に外務省職員が新潟県警の警察官を伴って自宅を訪れ、「応じなければ逮捕もありうる」と迫られ手渡したという。山本匠晃アナが紹介したスポーツニッポンの記事によると、杉本さんは「報道の権利を奪うもので言語道断だ」と話している。
キャスターの齋藤孝は「自己責任とはいっても、何かあった時は国が動かざるを得ないわけですよね。そういうことで報道の自由が認められるかどうかはかなり微妙だと思います。誘拐ビジネスもあって、その地域以外でも誘拐される可能性はあるのだし」と、やむを得ないという。
渡航計画をどうやって知ったのか
ただ、外務省の動きはおかしなことが多い。後藤健二さんのときも何度も渡航自粛を説得していたというが、どうして渡航計画を知ったのか。おそらくは湯川遙奈さんの拘束と関係があると思われるが、外務省は表向きは「関わりはない」としている。「イスラム国」とのパイプがあるというイスラム学者の動きを警察が封じたというのもあった。外務省と無関係ではあるまい。後藤さんはイスラム学者と連携があった。
今回も杉本さんのシリア行きがどうしてわかったのか。旅券申請でそう書いたのだとしたらずいぶんと間抜けな話である。本当にシリアへ行くつもりなら、渡航先を「パリ」とでも書いておけばいいことだ。報道の自由なんぞわざわざ振り回す必要もない。
新聞もテレビもこのあたりをはっきり伝えない。とくに、外務省と官邸の動きに「ご用聞き」なのが気になる。