日本は富の集中が加速中。若者は働いても住む家も持てない
ピケティ教授はこれ以上格差を広げないためにある対策を提唱している。それは資本に対する課税強化だが、その結果、税金の安い国に資本・富が逃れる可能性は強い。そこで、こうしたグローバルに移動する資本に対しても、各国が共同して課税できる仕組みを作るべきだという。
国谷「資本に対するグローバルな累進課税というのは、あまりに理想的に過ぎるのではありませんか」
ピケティ「すぐに対処できるとは思っていません。しかし、何もせずにいていいわけではありません。各国とも国際的な協力を求め、今できることをやるべきです」
国谷「おそらく多くの人々がグローバル課税に反対だと思います。これに対して本の中では『100年前には所得税だって反対されていた』とお書きのなっていますね」
ピケティ「格差と課税の歴史は驚きに満ちていて、100年前、所得税は決して実現できないといわれていましたが、今では当たり前です。つい最近も、日本で相続税の累進性が引き上げられました。これは富に対する税金です。日本は多くのヨーロッパの国々と同じく、人口減少という問題に直面しています。アメリカ以上に、過去に蓄積された富の相続が社会に与える影響が大きくなっていくはずです。
日本ではまだアメリカほど所得の格差は問題になっていませんが、過去に蓄積された富と相続された資産の額はアメリカより多いのです。中間層や低所得層の所得税率を少し下げたほうがいいかもしれません」
国谷「焦点は格差が正当か、そうでないかということですね」
ピケティ「その通りです」
国谷「それが民主主義にとって最も重要ということですね」
ピケティ「格差が正当化される範囲内であることを検証する組織や政策の必要性を忘れてはいけません」
国谷キャスターはこうまとめた。「日本であれ、欧米であれ、先進国は1970年以降、経済的な不平等は拡大しています。ピケティ教授は人口減少が拡大している日本では、今後、富の集中、格差拡大が加速する恐れがあり、相続の恩恵にあずかれない若者が、自分で働いた所得だけでは家を持つことが困難になると警告しています。
経済的不平等を大きく受ける若者に対するさまざまな施策や、男女ともに働きやすい環境を整備して、少子化問題に取り組むことこそがきわめて重要だという指摘が強い印象を受けました」
赤坂和郎
*NHKクローズアップ現代(2015年2月2日放送「21世紀の資本主義はどこへ~トマ・ピケティに問う~」)