残虐テロ組織で片づけられない「イスラム国」!制圧地域で予防接種や病院・老人ホーム

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日本からも10人ほどが「イスラム国」参加

   この事件で一気に名が知れわたったイスラム国だが、その残忍な面ばかりが強調されるが、「イスラム国 テロリストが国家をつくる時」(文藝春秋)の著者、ロレッタ・ナポリオーニ氏によれば、「イスラムの新しい黄金時代をつくる」という魅力的なメッセージを発して、ヨーロッパやアメリカで暮らすイスラム系移民の不満につけ込む鋭い政治感覚を有した武装組織だという。彼らが標榜する「カリフ制国家」とはムスリムにとっての理想の形だ。数世紀に及ぶ屈辱や差別、異教徒への屈従からの解放であり、それはユダヤ人のために建国したイスラエルのようなものを目指しているというのである。

   彼らが油田を制圧して多額の資金を稼いできたことは知られているが、他のどの武装集団もやったことがないことをやっている。自爆テロ1件ごとの費用に至るまで詳細な収支を記録し、高度な会計技術を使って財務書類を作成しているという。また、兵士たちには安いながらも給料が支払われ、制圧地域内では予防接種も行われ、病院から老人ホームまで備えているというのだ。

   ナポリオーニ氏によれば、イスラム国とこれまでの過激派集団との違いは、イスラム国が明確に国家たらんとする意思を持っていることだという。単なる人殺し集団が国家建設だと、笑わせるなと侮ってはいけない。

   アメリカを中心とする有志連合は空爆によって、わずか1か月の間にイスラム国戦闘員を6000人殺したと発表した。反イスラム国連合はイラク国内での軍事的勝利が続いている。さらに原油価格暴落で大きく収入を減らしていることも事実だ。

   だが、『ニューズウィーク日本版』によれば、<今もISIS(イスラム国=筆者注)には、戦闘員を次々に補充できるという大きな強みがある。ヨーロッパやアフリカ、中東からの大量の戦闘員の流入はまだ止まっていない。この点は、アメリカを初めとする反ISIS諸国にとって最も厄介な問題だ>

   噂では10人ほどの日本人がイスラム国に参加しているといわれる。週刊文春ではアルジェリア系フランス人(26)と結婚した日本人女性(29)が2か月前に出国。トルコ経由でイスラム国へ参加したのではないかと、娘の父親が話している。その他にも5人ほどがイスラム国の支配地域に入っているのではないかと公安関係者が語っている。日本人にまでアピールしたのはイスラム国の巧みな宣伝工作であろうが、これからまだ増える可能性があるのではないか。

   文豪・トルストイを持ち出すまでもなく、暴力に暴力で対抗すれば連鎖はどこまでも果てしがない。後藤さんにもしものことがあれば、イスラム国だけではなく、イスラム教徒は日本人全体の敵だという世論が巻き起こり、9・11の時にアメリカのメディアがブッシュの戦争に沈黙したように、いや、それ以上の自主規制がメディアに広がりかねない。

   そして安倍首相の思惑をも遙かに超えて、自衛隊を中東の紛争地帯に送ることを、この国の国民は進んで選択するかもしれない。この人質事件がその「号砲」になりかねないと心配している。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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