「イスラム国」が日本人男性2人に2億ドル(約237億円)と引き換えに殺害予告した事態を受けて、安倍首相は「政府の総力をあげて救出に手段を尽くす」と表明したが、交渉ルートがあるのかないのかも定かでない。タイムリミットは日本時間のあす23日(2015年1月)午後2時50分とされる。
資金源の原油価格下落で人質ビジネスにシフト
人質の1人、フリージャーナリストの後藤健二さん(47)は昨年10月にシリアのラッカへ入る際、「何が起ってもすべての責任は私自身にあります」というビデオ・メッセージを残していた。ガイドの話では、8月に「イスラム国」に拘束されたもう1人の人質、湯川遥菜さん(42)の情報をとるのが目的だったという。
11月になって後藤さんの妻に身代金20億円を要求するメールが入った。これは水面下の話だったが、今回は公開で、身代金も10倍以上にはねあがった。この意図もいまひとつ読み切れない。本当の狙いは何なのか。
「イスラム国」はこれまでにアメリカ人とイギリス人5人を殺害している。が、これらはいずれも米英の空爆に対する報復だった。昨年4月に解放されたフランス人ジャーナリストのケースでは、フランス政府が身代金を払ったといわれ(仏政府は否定)、空爆以前だった。
「イスラム国」の資金源は、石油の密売とサウジアラビアなどの富裕層からの寄付、身代金とみられるが、原油価格の下落で身代金がビジネス化しているという指摘もある。この1年間に40~53億円ともいわれる。払ったのは欧州諸国だ。
だが、今回のようにネットに公開されると逆に交渉は難しくなる。となると、ビデオ公開の意図は何なのか。おととし9月にシリア北部で「イスラム国」の武装勢力に一時拘束された報道カメラマンの横田徹さんが出演した。彼らは横田さんを「2000ドルで売る」と要求したが、横田さんが頼っていた有力者が断って助かったという。彼らがまだ国家として独立を宣言する前で、反政府勢力だったのも幸いだったという。
日本人は気前がいい
政府はヨルダンのアンマンに現地事務所を設置して、「イスラム国」との接触方法を探る一方、安倍首相はエジプト、トルコの大統領、ヨルダン国王に人質解放への協力を求めた。
司会の加藤浩次「政府は手を尽くすというが、交渉ルートはあるのですか」
現代イスラム研究センターの宮田律・理事長は「資金を出しているサウジ、クウェートの富裕層のルートとトルコのエルドアン大統領が持つといわれるコネが頼りになります。タイムリミットは、中東の常識からいうと、引き延ばしは可能だが、中東では日本人は気前がいいと思われているのが心配だ」という。