シリア、イラクに勢力を広げる「イスラム国」が日本人2人の身代金を要求する映像がきのう20日(2015年1月)、インターネットで流れた。「72時間以内に払わなければ殺害する」としており、要求金額の2億ドルは安倍首相が拠出を表明したイスラム国対策費と同じだ。これを「敵対行動」とみなしたものらしい。
これまでにも米英の人質5人を公開殺害
映像に出ていたのは千葉の会社経営者の湯川遙菜さん(42)とフリージャーナリスト後藤健二さん(47)だ。湯川さんは昨年8月(2014年)、イスラム国が拘束した映像を流したあと不明になっていた。後藤さんも10月を最後に連絡が取れなくなった。
映像は安倍首相の中東訪問と資金援助の表明を伝えるNHKのニュースを流したあと、英語とアラビア語で「日本政府と日本国民へ」として人質の映像になった。土漠のような土地をバックに、2人はオレンジ色の服を着せられ、後ろ手に縛られてひざまづき、中央に立った黒服に覆面の男が英語で話した。
「日本の首相へ。8500キロ離れているのに、自ら進んで十字軍への参加を誓った。われわれの女性や子ども、イスラム教徒の家を破壊するために1億ドル、イスラム国の拡大阻止に1億ドルを寄付した。だから、この2人の命に同額を払ってもらう」「時間は72時間。拒否すればこのナイフは悪夢になる」とナイフを突き出した。
男の目は下を向いており、テキストを読んでいる風だ。英語はイギリスなまりがあった。昨年8月、米人ジャーナリストを殺害した際に映像に出てきた男に似ているという。
安倍首相は訪問中のイスラエルで、「許し難い行為だ。強い憤りを覚える」とコメントし、2人に危害を加えないよう求めたが、身代金の支払いは拒否した。
イスラム国はこれまでにアメリカ人3人、イギリス人3人をビデオに出し5人を殺害しているほか、シリア人戦闘員多数を殺害する映像も流している。イスラム国はイラク戦争後にできたアルカイダ系反米組織から生まれた。内戦が続いたシリアで勢力を広げ、昨年6月にイラク北部の都市モスルを制圧して「イスラム国」独立を宣言した。極端なイスラム法による統治で、異端や犯罪者への残虐な処刑が知られている。戦闘員は世界80か国以上から1万5000人以上が集まっているといわれ、他にも映像制作やネットでのPRに長けた人材もいるようだ。
交渉ルートほとんどなし
キャスターのテリー伊藤「安倍首相は身代金は拒否したわけですが、その状況の中で2人をどう助けるか...」
現代イスラム研究センターの宮田律・理事長は「安倍首相の難民支援策などの表明をイスラム国は違った見方で受け止めたということでしょう」という。
宮崎哲弥(評論家)「資金が枯渇していて金が欲しいという見方がありますが・・・」
宮田「従来から湾岸諸国の富裕層からの献金とイラクの原油の密輸で成り立っているんです。今回の行動は資金だけの話ではないと思いますね」
司会の加藤浩次「いままでの人質については金額をいわなかった。今回は金額を出していますよね」
宮田「安倍総理の額が具体的だったので、それを受けてのことだと思うが、アラブ流は高く吹っかけるのが当たり前」
テリー「安倍さんは非軍事活動に使うようにと明言はしている。もう1度言ってもいいんじゃないですか」
加藤「そういうのを、十字軍といわれてもねぇ」
テリー「びた一文でも出したらテロ活動に使われるから出せない。どうしたらいい? 交渉は可能?」
宮田「国際社会の手前、やるとしても水面下でやらざるをえないですよね。湯川さんでもシリアに交渉ルートはあったらしい」
加藤「それでもだめだったのが、今回さらに難しくなったということでしょうね」
宮田「希望的観測だが、欧米につくなというメッセージかもしれない。それだったらもしかすると助かるかも」
まさに希望的でしかなさそうだ。