中1の女の子。小学校では活発でバスケチームのキャプテン。学校が大好きだった。ところが、半年前から突然のめまいや胃の痛みに襲われ、朝起きられなくなった。起こす母の声は聞こえるが、体に力がはいらない。声も出ない。遅刻が度重なると、クラスの目もきびしくなった。でも、どうしていいかわからない。母が子どもの睡眠専門病院を探し当てた。そこでわかった病名が「概日リズム睡眠障害」だった。
小学校時代は午後11時に寝て朝7時に起きた。中学では塾があるので就寝は12時、朝は部活の朝練で6時に起きる。小学生に必要な睡眠は10時間だが、すでに寝不足だったのを、さらに2時間削っていた。これが原因だと医者はいった。
宿題、習い事、ゲーム、スマホで「脳は過労状態」
昨年(2014年)、小中学校の不登校が12万人と6年ぶりに増えた。文部科学省が不登校のきっかけを調査したところ、複数回答で34%が「生活のリズムの乱れ(睡眠障害)」をあげた。別の全国の小中高の調査では、「リズムの乱れ」の兆候とされる「午前中の眠気」を6割が訴えていた。睡眠障害が子どもたちを蝕んでいた。
睡眠専門病院を訪れる子どもは年間のべ3700人にもなる。その多くが不登校を経験している。病院は2か月の入院で乱れた生活のリズムを取り戻させるのだが、退院しても再発があとを絶たない。病院が入院患者100人に睡眠障害の背景を聞いたところ、「部活」が38%、「塾」が27%だった。他にも宿題や習い事、ゲームやスマホの浸透もあり、子どもたちの生活が深夜・早朝に及んで、真面目な子ほど睡眠障害に陥ることがわかった。
いったい子どもに何が起っているのか。国立精神・神経医療研究センターの白川修一郎・客員研究員は「脳が過労状態になっているのだ」という。睡眠は脳の疲労を回復させ、成長ホルモンも出る。子どもが十分に睡眠がとれないと、前頭葉や海馬の発達に影響が出る。ものの判断、意欲、記憶にかかわる部分だ。自律神経にも乱れが出て、将来の糖尿病のリスクも増すという。
白川氏は「(受験勉強でも)睡眠時間を削ってはまずい。試験は知識の引き出し能力なんだから、よく寝たほうが成績がいいんです」と話す。