ああ、紅白歌合戦の威光いまいずこ...歌手のわがままに引っ張り回されるNHKの凋落

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   明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

   昨年大みそかのNHK紅白歌合戦は中森明菜や桑田佳祐まで引っ張り出したが、あえなく視聴率は前年より2.3ポイントも下がって42.2%止まり。以下は『週刊文春』と『週刊新潮』の特集から引用したものである。

   中森には「録画映像疑惑」がもちあがり、桑田には歌詞の内容が「安倍首相批判」ではないかという反響が出た。1月6日付の朝日新聞がこう報じている。<横浜での年越しライブ会場から中継で登場した桑田さんが歌ったのは「ピースとハイライト」だった。

   世界各国の言葉で「平和」という文字が映し出された映像が流れる中、桑田さんは少しおどけたように歌った。

♪都合のいい大義名分(かいしゃく)で 争いを仕掛けて 裸の王様が牛耳る世は......狂気

   この「都合のいい大義名分」を、集団的自衛権行使容認のための憲法解釈変更に重ね合わせて聴いた視聴者らがネットで反応した。曲名を「平和(ピース)と極右(ハイライト)」と読み替えたり、「裸の王様」を安倍晋三首相への揶揄(やゆ)と受けとめたり――。

   ツイッターなどにはこの歌の「解釈」を巡って賛否の投稿が相次いだ>

   朝日新聞らしい解釈だが、桑田が意識してそう歌ったのだとすれば、日本のジョン・レノンといってもいいのかもしれない。

   中森明菜の疑惑についてはNHK関係者がこう話す。<「あれは生放送です。ただ、明菜の声量が生中継で出せなかった時のために、流れる曲に録音した明菜の歌声を入れて、その上に彼女の生歌を乗せて中継したのです」>

   これはバックトラックといって音楽ライブでよく使われる「声量偽装」ともいわれる技術だそうだ。やはり明菜は大勢の前で歌える状態にはなく、歌さえも「偽装」しなければならなかったということだ。これで復帰がまだまだ遠いことが全国に知られてしまった。

   桑田の出場も直前まで伏せられていたそうだが、それは週刊新潮によると犬猿の仲の長渕剛がそれを知ると降りてしまうことを慮ったというのである。その意趣返しではないだろうが、長渕は新曲を歌うといい出し、NHKもさじを投げ好きにしてくださいといったと週刊文春が報じている。

   中島みゆきもAKBなどの若手がガヤガヤうるさいNHKホールで歌うことを嫌がったために別スタジオから歌ったという。昔の紅白の威光を知っているわれわれには信じられないことだ。美空ひばりは例外として、他の歌手のわがままなど聞く耳持たなかった紅白の凋落を示すエピソードである。

   司会の吉高由里子のひどさは際立っていたが、薬師丸ひろ子も<「全くダメだった」(スポーツ紙記者)>(週刊文春)。ヒドイを通り越して哀れさを感じさせるステージだった。もう歌など歌わないほうがいい。もう一人酷かったのが大トリの松田聖子。あれだけのタマがプレッシャーで震えていたとは思えないが、トリをとるには10年早いと思わせるステージだった。

5分で分かる「世界的ベストセラー『21世紀の資本』」週刊現代タイムリーな好企画

   お次は『週刊現代』と『週刊ポスト』のアベノミクスにまつわる記事を2本。朝日新聞の1月5日付社説で安倍政権の経済政策をこう批判している。<金融緩和で物価を押し上げることが果たして好ましいのか。企業がきちんと利益をあげて働く人の賃金が増え、その結果、消費が活発になって物価も上がっていく。求められるのはそんな経済の姿だろう。

   物価が将来どれだけ上がると考えるか、人々の期待(予想)に働きかける政策から、実需を見る政策へ。経済のかじ取りを切り替えるべきではないか>

   日本の現実は<年収200万円以下の働き手が1100万人を超え、住民税が非課税となる低所得世帯の人が2400万人を数える。かつて日本経済を支えた中間層が細り、低所得層が増えた。それが、日本経済のいまの姿である>

   格差がますます広がり、わずかな富裕層やアベノミクスで恩恵を受けている一部の大企業だけが「我が世の春」を謳歌しているだけである。

   週刊現代は世界的な投資家ジム・ロジャース氏にこういわせている。<「日本はすでに多額の政府債務を抱えており、本来であれば財政支出を減らすべきです。そもそも人口減少が急激に進む国に、新しい道路や橋を作る必要がどこにあるのか。大規模な財政支出を止めれば減税することも可能で、そうすれば国民の生活水準は改善されていく。しかし、安倍総理がやっているのはそれとは真逆。アベノミクスは今年も日本を破壊する方向に進んでいくということです」>

   急激な原油安でロシアが喘いでおり、アメリカもシェールガス景気に水を差された格好だ。欧州は経済不振から抜け出せず、中国の成長率の鈍化がはっきりしてきた。世界的にいつ何があってもおかしくない「90年代末と似てきた」(英エコノミスト)不安定な時代である。

   株価も不安定ながら2万円の大台に乗るのではないかと見られているようだが、週刊現代によれば6月に最大の山が来るという。それはアメリカのFRB(米連邦準備理事会)のイエレン議長が9年ぶりに行うといわれる「利上げ」だ。これまでアメリカはゼロ金利政策をとり続けてきた。景気を刺激するアクセルをふかしてきたわけだが、それをやめてブレーキを踏めば、スピンしてアメリカ経済が失速する可能性が出てくるというのである。そうなれば投資家たちは株などに投資したカネを引き上げるリスクが高まるという。

   また、もし利上げしないという判断をすれば、アメリカ経済が減速していることを意味するわけだから、アメリカ株の売りにつながる。こうしたアメリカ経済の余波が日本に押し寄せ、株大暴落のシナリオも考えられるという。

   ところで、いま世界的なベストセラーにフランスの経済学者トマ・ピケティ氏が書いた「21世紀の資本」(みすず書房)がある。その本が5分でわかるという記事を週刊現代がやっている。

   こうした企画はもっとやるべきである。アメリカではこうした重要だが大著には必ず要約本が出て、それが売れるのだ。5分とはいかないが1時間程度で内容のダイジェストをする記事が、日米の本を問わずもっとあっていいと思う。それが読みたくて週刊誌を買う読者も必ずいるはずだ。

   この本の翻訳を手がけた山形浩生氏がこう解説している。<本書で主張していることは、実はとても簡単なことです。各国で貧富格差は拡大している。そして、それが今後大きく改善しそうにないということです。

   なぜかというと、財産をもっている人が、経済が成長して所得が上がっていく以上のペースでさらに金持ちになっていくからです。ピケティの功績は、このことをデータで裏付けたことにあります>

   この格差を是正するのには相続税の増税が必要だとしているが、これは富裕層に限ってなされるべきであろう。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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