東京地検は社会福祉士を採用―服役前から生活支援
司法と福祉を連携させる取り組みは始まっていた。長崎県の地域生活定着支援センターだ。出所者を福祉事務所につなぎ、生活保護や医療の手助けをする。5年前に国のモデル事業としてスタートし、NPO法人が運営している。ここで立ち直った高齢者は少なくない。いま老人ホームにいる78歳の男性は、生活苦から盗みを重ね、15回服役した。センターの支援で4年前、受け入れ先が見つかって落ち着いた。「お世話になったから」と毎日3時半に起きて、ホーム内に新聞を配る。「ありがとうといわれるのがうれしい」と屈託のない笑顔をみせていた。
府中刑務所は出所間近の高齢者に、社会で孤立しないための訓練と教育をしている。「2度と帰ってこないように。刑務所が試されている」という。東京地検はさらに進んで、全国に先駆けて社会福祉士を正規採用した。服役させる前からの支援である。
60代後半のホームレスの置き引き事件があった。身寄りもなく弁済もできない。社会福祉士は「生活保護があれば立ち直れる」と社会福祉事務所につなぎ、事件は起訴猶予になった。これまでに500人を福祉事務所につないで社会復帰させた。
浜井教授は「受刑者で、刑務所に入る前に幸せだった人は一人もいない」という。刑務所で受刑者の貧困に始まる「負の連鎖」を見た。「(再犯を)止める人がいないから」
老人ホームの男性だって支援がなければ16回目の服役になっていたことだろう。彼らの社会復帰を自分のこととして考えはじめた人がいた。日本人も捨てものではない。
ヤンヤン
*NHKクローズアップ現代(2014年12月4日放送「犯罪を繰り返す高齢者~負の連鎖をどう断つか~」)