韓国・仁川で行われたアジア大会で、カメラを盗んだとして罰金刑になった競泳の元日本代表・冨田尚弥選手(25)が韓国での正式裁判で無罪を求めると、きのう4日(2014年12月)に会見で表明した。しかし、この問題、ポイントがズレているようで、どうにもすっきりしない。
JOC幹部が見せられた映像とは違うもの?
日韓の弁護士を伴って会見した冨田は、「全国からいただいた手紙や支援を励みに、正式裁判をやろうという気持ちになったので、それらの方々にメッセージを伝えたくて、本日出席しました。法廷では真実を述べていきたい」と話した。
大竹真レポーターが「前回の会見から1か月で新たに思い出したこと、記憶違いとかはあるりますか」と聞いたが、「とくにないです」と素っ気ない。状況は何も変わってないということだ。
冨田は韓国メディアのカメラ(60万円相当)を盗んだとして仁川警察の事情聴取を受け、カメラは冨田の部屋のバッグからみつかった。盗んだことを認めたため、略式起訴で10万円の罰金を払った。しかし、帰国しておよそ1か月後 、一転して「盗んでいない」と主張し、仁川地裁に正式裁判を申し立て受理された。
きのうの会見で、韓国の弁護士は「まだ検察側の証拠開示がないので、証拠によって弁護方針が決められると思う」と話した。重要証拠は会場の防犯カメラの記録だ。仁川警察はこの映像に冨田がカメラのレンズをはずしてカメラボディーを盗んだところが写っていたとしている。
しかし、冨田は「カメラは知らない男がバッグに入れた」「盗んだところは映像に写っていない」と主張している。これにJOCが「驚いている」と異を唱えた。「写っているのを見て」警察の判断を受け入れ、JOCは冨田を代表から外し、帰国後処分している。
国田武二郎弁護士は裁判ではこの映像が確かなものかどうかが争点になると話した。JOCの見解について、冨田は「ぼくが見た映像とJOCの方が見た映像とか違うようなので、そこはまだわからない」といい、国田弁護士も「JOCは部分しか見ていない」といった。
どうしてもすっきりしない「なぜ犯行認めたのか」
問題は映像の有無じゃあるまい。盗んでいなければ写っているはずもないと、なぜ言い切れないのか。記者たちもそういう聞き方はしていない。
もうひとつのポイントは自白調書の証拠能力だと国田弁護士はいう。警察は「容疑を認めれば大事にしない。他の選手と一緒に帰国できる」と誘導したというのだ。この点でも、盗んでもいないものをなぜ認めたのか、部屋でカメラが見つかったのはなぜだと聞かないから、話がいっこうに見えてこない。
コメンテーターの菊地幸夫(弁護士)は「映像はあるかないかではっきりするが、調書の方は難しいのではないでしょうか。略式起訴は普通の手続きだから、誘導とまでいえるかどうか」と話す。
香山リカ(精神科医)も「意図的に作り話をしているようにはみえないですよね。やっていないというのは本当に見える」というのだが、なればなおのこと、なぜ認めたのか、カメラがなぜバッグに入っていたのかという話になるだろう。韓国の検察だって攻めてくるはずだ。どうもピンぼけにみえるのだが、どうだろう。公判は来月12日(2015年1月)に開かれる。