ベルリンの壁崩壊から25年『新たな冷戦』!プーチン「アメリカの一極主義がすべての原因」

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   冷戦終結後、自由主義・資本主義体制に移行し、西側諸国と協調路線をとってきたロシアが、ウクライナ問題をきっかけに強硬姿勢に転じ、欧米との関係を最悪レベルになっている。ロシアが描く未来秩序とはどんなものなのか。

「ウクライナ市民の抗議行動を乗っ取った米国工作員」

   ことし3月(2014年)、ロシアはクリミア半島を一方的にロシアに編入した。西側はこれを国際秩序への挑戦と受け取った。このときプーチン大統領は「物事には限度がある。欧米は一線を越えた。ウクライナにまで関与を強めたことが危機の原因だ」とアメリカを非難した。

   ウクライナの政変では、アメリカの政治家、政府高官が直接乗り込んで、公然と親欧米派を支援した。モスクワでインターネットTVを経営 するフィリップ・レオンチェフ氏は「市民の抗議行動がロシアを敵視する勢力に乗っ取られていた。アメリカがこんな支援をするから世界は混乱状態になるのだと確信した」という。

   これには伏線があった。ウクライナに初の欧米寄り政権ができた04年のオレンジ革命だ。レオンチェフ氏は当時、欧米にあこがれ、プーチンには批判的だったが、ボランティアで入ったウクライナで思いもよらぬ真実を見た。民主化運動を組織していたのはアメリカのNPO、特殊な任務を帯びた人たちだったのだ。今回もその延長と見る。プーチンの抱く危機感もこれだった。

   ロシアの対米不信は何が原因なのか。ベルリンの壁が崩壊した直後の1990年に行われたゴルバチョフ書記長とベーカー国務長官との会談に遡る。ここでゴルバチョフはNATO(北大西洋条約機構)が東へ拡大しない条件で、統一ドイツのNATO加盟を認めたのだ、ベーカーも同意していた。

   ところが、ソ連解体後、NATOは東へ拡大を続け、バルト3国も加えた。当時ロシア政策を担当していた米国務省幹部は、「ロシアを追い詰める意図はなかった」というが、ロシアはそうは受け取らなかった。

   プーチン大統領は先のアジア・ヨーロッパ首脳会議で、アメリカの一極主義を厳しく批判して、「アメリカは国際秩序に欠かせない力の均衡を破壊した。いま立っているのは、新たなルールか、ルールなきゲームかの歴史的転換点だ」と語った。

ロシア下院議長の皮肉「日本はもう少し(米国から)自立できるのではないか」

   インタビューに応じたプーチン氏側近のセルゲイ・ナルイシキン下院議長も明快だった。

「アメリカは世界のあらゆる場所に介入して、自分たちに都合のいい混乱を作り出す。ウクライナで起っていることがそれだ。アメリカはウクライナ人をゲームのコマに使っている。(だから)住民は祖国ロシアに戻りたかったのだ。クリミア編入を見直すことはない」

   クリミア問題で西側はロシアに制裁を課した。しかし、この25年間に深まった経済の相互依存関係は、ことを複雑にしている。ロシアも物価高騰で苦しんでいるが、ドイツも天然ガスのストップなどがこたえている。どちらもとことん傷つくのを避けたいのが本音である。ただ、新たな秩序の形は見えてこない。

   ナルイシキン氏は「協力関係回復には対話しかない」という。「歴史を見ても、ロシアを外から脅かしても無駄だ。圧力にロシアは結束する。今回の制裁では、どの国が政治的に独立しているか、誠実かそうでないか、圧力に操られるかが見極められたのは収穫だった」と話した。そして、「日本はもう少し自立できるのではないか」と皮肉った。

   ベルリンの壁の崩壊と冷戦終結は経済で東側が白旗を掲げた結果だった。それから25年経って、いまウクライナはロシアとの国境に新たな壁を作っている。なんという不毛。25年は長過ぎて、冷戦40年の不毛を忘れさせてしまったらしい。

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2014年11月06日放送「ベルリンの壁崩壊から25年② 『新たな冷戦』は避けられるか」)

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