競泳平泳ぎの元日本代表、冨田尚弥選手(25)がきのう6日(2014年11月)に会見して、先のアジア大会でカメラを盗んだとされる一件を否定した。しか し、やってもいないことをなぜ認めたのか、選手生命を断たれる事態になぜその時に反論もせず、いまになって言い出したのかなどスッキリしない。おかしな印象はかえって強まった。
急性ストレス反応で会見中も涙
冨田は10年の競泳ワールドカップで、短水路200メートルで日本記録を出し、北島康介選手を破って優勝した。「ポスト北島」と期待を集めたエー スだ。それが、9月に韓国・仁川で開かれたアジア大会の水泳会場で、記者席にあったカメラを盗んだ容疑で略式起訴された。報道では「カメラが欲しくなった」と話したとされ、選手団から追放された。帰国後の空港でも、「大変お騒がせして申し訳ありませんでした」と頭を下げていた。
警察は防犯カメラに冨田が盗み、バッグに入れて持ち帰った姿が残っていたとして、冨田と選手団役員に確認し、事実、カメラは冨田の部屋にあった。どうみても盗んだとしか思えない展開だった。
しかし、冨田が「やっていない」といっているという話はさまざまに伝えられ、奇妙な印象を与えていた。なにより、日本代表のユニフォームを着た選手が「衆人監視の会場でカメラなんか盗むか?」という疑問である。
きのう名古屋で開かれた会見で、冨田はまず「ボクはカメラを盗んでいません」と切り出し、3時間近くも記者の質問にも答えた。主な内容はこうだ。
【警察に見せられた映像】「画面がはっきりしなかった。盗っているとされるシーンは写っていなかった」
【時間】「犯行時間とされる午前10時48分には、松田丈志選手と話していた」と主張。しかし、韓国警察に確認すると、時間は午前11時48~56 分だったという。
【怪しい人物】「濃い緑色のズボンで短髪のアジア系の男が、手首を掴んで何かをバッグに入れた」。冨田はバッグを取り返して部屋に持ち帰った。「危害を加えられたり争うのが嫌だった。入れられたものはゴミだと思った。しかし、その男の姿は防犯カメラから切れて(外れて)いた」
【なぜ反論しなかったのか】「心が弱くて、やってないといえなかった。韓国に残されることが不安だった」
【不服申し立てもしなかったのはなぜか】「上野先生(上野広治・水連理事)、平井先生(平井伯昌ヘッドコーチ)を信頼しているので、異議申し立ては先生を相手取ることだと思った。(ここで涙ぐんだ)」