日本の「産業観光」が注目されている。工学院大学の後藤治教授によると、地域のごく日常である産業やその遺産を観光させるものだそうで、「空き家や空き工場のようなお荷物になりがちなものも宝物に見せる」という。
その筆頭格が世界遺産に登録された群馬の富岡製糸場、島全体が炭鉱町だった長崎の軍艦島などだ。ほかにも、酒造メーカーの資料館には外国人が続々とやってきて、日本の奥深い酒造りを興味津津で見学している。高度経済成長時代に「四日市ぜんそく」の深刻な公害で引き起こした三重県四日市のコンビナート周辺も、いまや工場の夜景を眺めるクルーズツアーで大人気だそうだ。
空き家、空き工場も人気スポットに
群馬県桐生市も「織物の町」として売り出しており、桐生特産の着物を着て織物工場などを見て回るツアーが若い女性に人気だ。観光に訪れる人が増えることで、衰退していた織物産業自体も活性化したという。
明治から続く織物業者は、自信作の着物を観光で訪れた女性から「固くて動きづらそう」と言われて「見てる角度が違ったんだ」と気づき、新素材の軽くて動きやすい着物づくりに挑戦している。若者をターゲットにしたあらたな着物ブランドも立ち上げた。最近は取引先も増えて、これまでにない手応えを感じていると話す。
全国にはまだまだまだ産業観光のネタが山ほどあるそうで、経済産業省は歴史的に意義ある全国の産業施設1115件を「近代化産業遺産」に認定した。担当者はこれらの観光が地域活性の切り札になりえると期待している。
後藤教授「産業というのはどの地域にもあります。空き家、空き工場みたいなものも、観光客という触媒を通して見ればすごい資産になる。それは地域と産業の新しい関係、ものを生み出していく力になるのでないかと考えてます」