小笠原諸島周辺の日本の排他的経済水域で中国漁船による赤サンゴの密漁が続いている。海上保安庁によると、9月15日(2014年)には17隻だったが、10月31日には212隻に増えた。狙いはサンゴのなかでも貴重な赤サンゴの密漁といわれている。
操業は夜に行われ、底引き網で根こそぎさらう。密漁船と出くわした地元小笠原の漁師は「連中は鉄の船でこちらはプラスチックの10トン足らずの船。逃げるしかない。連中はわれわれを見てもびくともしないし、逆に脅しをかけてくる」という。
漁民乗ってないオトリ船
密漁船の船腹には母港を示す「浙」が多い。そこで、浙江省の漁村を取材すると、村の女性は「日本へ赤サンゴを盗みに行くと聞いた」と、悪びれた様子もなく話す。しかし、浙江省の沿岸から小笠原諸島までは片道で最短2000キロ。往復で4000~5000キロだ。燃料費だけで200~300万円かかる。しかも、サンゴは魚群探知機には映らないため、勘を頼りに広範囲に海底をさらうしかない。採算を取るのはとても難しいという。
それでもやってくるのはなぜか。番組ゲストの東海大海洋学部の山田吉彦教授は「狙いはサンゴの密漁だけではないのではないか」とみている。「当局、あるいは密漁組織によって、日本側がどこまで対応できるか、海上警備力を試す挑戦ではないでしょうか。よく見ると、漁船員のいない船もいます。密漁しているのはごくわずかで、あとはオトリ船の可能性もあります」
中国外務省の華春瑩報道官はこの密漁について言及し、「私たちは一貫して漁民法に基づいて海上の生産活動を行うように要求している。赤サンゴの違法漁獲は禁じている」と言いながら、日本に対し「モラル、理性を保ち、法に基づいて適切な処理をするように希望する」と居直ったようなことも言う。山田教授の見方通りだとすれば、盗人猛々しいとはこのことだ。