政府は日本人拉致被害者の再調査をめぐり、伊原純一・外務省アジア大洋州局長らを来週にも平壌に派遣することを決めた。訪朝には拉致被害者の家族から慎重な意見が出ていたが、政府は「調査を前に進める観点からも、できる限り現状について詳細を聞き出すことは意味がある」と判断した。何度も煮え湯を飲まされている相手だけに、日本政府の思惑通りの成果があるかどうか...。
ソン・イルボ大使「安倍首相を評価しています」
今月(2014年10月)初めに訪朝し、北朝鮮側の窓口になっている日朝国交正常化交渉担当のソン・イルボ大使に2時間ほど話を聞いたという共同通信の平井久志論説委員はこう解説する。
「ソン・イルボ大使が安倍政権の姿勢について評価していたのが意外でしたね。再調査で合意したストックホルム合意以降、『(安倍政権は)北朝鮮の制裁や孤立化を言わなくなった。その変化を自分たちは注目している』と言っていました」
齋藤孝キャスター「北朝鮮がどのくらいこの問題に真剣に取り組んでいるのか気になりますが、感触はどうなんですか」
平井「今回は真剣だと思います。国交正常化したいという気持は強いですよ。ただ、日本は拉致問題の解決が先で、双方の目的に違いがあるので簡単ではないでしょうが...」
拉致問題で「被害者情報」出さない可能性
それにしても、北朝鮮のしたたかさの背景に何があるのか。平井は「北朝鮮がとっているのは『サラミ戦術』だ」と次のように話した。「サラミは客に饗するとき薄く切って出しますよね。北朝鮮の対応はいつも大きく譲歩しない。少しずつ譲歩し、相手に対価を求めて最大限の効果を得ようとします。今回の拉致再調査の問題も薄めに設定しているので、私は核心的な情報が出るのは難しいという厳しい見方をしています。ただ、薄いサラミなら何枚も切らせればいい。結果的にたくさんの情報を得ることが可能ではないかと思います」
文
モンブラン| 似顔絵 池田マコト