膨大な公文書の管理が各省庁や地方自治体で緊急の課題になっている。政府が管理する公文書のファイルだけでも1400万件にもなる。国立公文書館には135万件の公文書が保管されている。
キャスターの国谷裕子は「歴史的価値がある公文書が、各省庁や自治体などの独自の判断で破棄されるのは、国民の知る権利を侵し、民主主義の根幹に関わります」という。
年間230万件の文書をたった4人で審査
東京大学の加藤陽子教授は「日本はこれまで欧米諸国に比べて公文書の管理に関する意識が低かった。活動の記録が残されていなかったら、国民が後で知ろうにも生きた証がないということです」と指摘する。
沖縄返還の費用の負担を巡る日本とアメリカの密約に関して、アメリカ側には文書が残っているのに、日本には外交文書がなかったり、3万4000件の秘密文書が防衛省だけの判断で廃棄されていた。
公文書管理法では重要な公文書が誤って廃棄されないため、各省庁が廃棄とした判断が正しいかどうかを内閣府公文書管理課で審査することになっている。ただ、年間230万件以上の公文書を4人で審査しなければならず、中身を見ずに各省庁が提出した目録だけで判断しているのが実情だ。
国谷「政府が扱う1400万件の公文書は、1つのファイルの厚さを2センチとして横に並べると東京から愛知県まで達するといいます。これだけの公文書をどう管理すればよいのでしょうか」
東京大学の牧原出教授はこう説明する。「国立公文書館に移管する指定を受けているのは、法律の制定、条約の締結、閣議の決定などの公文書です。しかも、途中のプロセスを記録した公文書は指定されていません。また、カテゴリーがまたがった公文書も指定されていません。日本の組織文化として、沈黙は金。喋らない残さないが美徳とされてきました。それがこれまで公文書を役所の判断だけで処理できるという土壌を生み出してきました」
フランスは200年以上前から文書管理の専門家育成
フランスでは200年以上前から公文書の保存と公開に力を入れている。重要な文書を適切に保存するための専門職・アーキビストを育成し、およそ800人のアーキビストが政府の公文書管理局から省庁などに派遣されている。彼らは第三者の視点で文書管理の徹底を図り、恣意的な廃棄が行われていないか厳格に判断している。牧原教授は「フランスと日本では国の成り立ちや民主主義に対する意識が違います。省庁の中に専門家が2人もいて、それぞれがチェックする仕組みがあり、国民の意識も高い」という。
国谷「日本でも公文書を巡ってフランスのようになるには何が必要でしょうか」
牧原教授「大量の公文書を処理するにはそのための仕組みが必要になります。民主主義を機能させるためには公文書管理を徹底し、国民も関心を持ってほしいですね」
ナオジン
*NHKクローズアップ現代(2014年10月20日放送「公文書は誰のものか~問われる1400万件の管理~」)