「不本意な100歳人生」の人もいるはずだが...
慶應大学百寿総合研究センターの広瀬信義医師はこう話す。「長生きをされている方は幸せな方が多いのはたしかです。ただ、私がお会いした105歳の北海道の方は、施設の方が非常に良いケアをされていたんですが、『やることがなくて、一日中寝ていてとても不幸だ』と話されていた。そういう例もありますが、全体として見ると幸福だと言われる人が多いですね。その理由として、私なりに考えると、達成感があるのではないかと思います」
国谷裕子キャスター「どういう環境の方が多幸感を感じやすいのか関心があるのですが、たとえば家族と一緒に住まわれている方とか、環境面で共通点はありますか」
広瀬医師「主観的幸福感を考える前に、その方がちゃんとした環境で生活されているかが非常に大切だと思います。私がお会いしたなかで、ひとりぽっちで生活されている方がいましたが、『幸せですか』と聞いたら『まあまあです』と言われた。しかし、はたからはあまり良いようには見えません。ある程度の環境が整ったところで幸せかどうかを調べる必要がありますね」
皮肉な見方をすれば、生活環境にめぐまれ長生きし結果、終わりよければすべてよしで、多幸感を持ち充実した達成感も感じる。そうした百寿者に話を聞けば、幸せという話が多くなるのも当然だろう。最低限度の100歳まで生き、多幸感を感じる人はほんの一握りなのではいか。生活環境から健康維持など自ら処方箋を考え実現できるほど今の日本は甘くはない。
*NHKクローズアップ現代(2014年10月15日放送「『百寿者』知られざる世界~幸せな長生きのすすめ~」)