100歳になって知る多幸感「老年的超越」みんなそうなのか?むしろ長生きしにくい世界一長寿国

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「100歳は当たり前。最低限度です、100歳は」

   こういって胸を張るのは103歳でいまなお現役の聖路加国際メディカルセンター理事長の日野原重明医学博士だ。たしかに、50年前の1963年にはわずか153人だった100歳以上の百寿者は、1998年には1万人を突破し、今では5万8820人に達している。車イスの生活が多い百寿者は老いや身体的衰え、死に対しどう向き合っているのか。

   最近の研究で、これまでの老いに対する常識を覆し、百寿者の多くが多幸感を感じる『老年的超越』と呼ばれる豊かな精神世界を生きていることが明らかになってきた。「100歳は当たり前」と日野原博士が語るように、この豊かな精神世界に入ってから迎えるのが人間本来の寿命なのかもしれない。

今の生活を積極的に受け入れるポジティブの感情

   日本人の平均寿命は年ごとに伸びて、いまは男性80.21歳、女性86.51歳といずれも世界一で、4人に一人が65歳以上という高齢化社会になっている。ところが、日常生活を自立して送れる健康寿命は男性71.19歳、女性74.21歳で、平均寿命との差は男性9.02歳、女性12.40歳と大きく開いている。体力の減退、さまざまな身体機能の衰えが進み、自立した生活が難しくなることへの漠然とした不安から『ピンピン、コロリ』を望む人が多いのも、この開きが大きいことからだ。

   そうした中で、大阪大学人間科学部の権藤恭之准教授が注目したのは、1年に3000~4000人のペースで増加を続ける百寿者の意識だ。どのような心理状況で生活し、老いや死に対する不安とどう向き合っているのか。15年前から70代~100歳以上の高齢者1500人以上から聞き取り調査を行い、「今の生活に不満はないか」など75項目の質問から老年期の幸福感の変化を探った。

   そこから意外な事実が分かってきた。80歳を境にして、身体機能の衰えが目立つ半面、今の生活を積極的に受け入れるポジティブの感情が芽生え強くなっていく傾向があったのだ。なかでも、多くの百寿者がありとあらゆることに幸せを感じる多幸感「老年的超越」を持っていることが分かった。

   家族と離れ、東京都内の老人ホームで暮らす110歳の日高帝さんは3年前から車イスの生活だが、週に1度しか外出できなくなったいまも、ふさぎ込むこともなく「毎日幸せを感じている」という。「東京五輪を楽しみにしているのよね、行きたい?」と聞かれ、「そう、行きたいし、出ます」という元気の良い答えが返ってくる。

   3か月前まで散歩を日課にしていた105歳の足立峻(たかし)さんは、足腰の痛みで一人での外出が難しくなった。ベッドで寝て過ごすことが多くなったが、足立さんも多幸感を感じているひとりだ。「戻るとしたら何歳ぐらいに戻りたいですか」という質問にも、「現在のままでいいです」という。「自分の生活に満足していますか」にも「ハイ、大満足。今が大変幸せです」

   15年前に妻を亡くしてから近所付き合いもなくなったが、必ずしも孤立感を深めているわけではないという。足立さんはこう話す。「周りの方、事物の一切のもののおかげを受けていると思います。このように生きさせてもらって不思議ですなあ。感謝感激です」

   これが老年的超越と呼ばれるものなのだろう。聞き取り調査の結果、百寿者は住んでいる場所や家族関係に関わりなく、同じような感情を抱く傾向があるという。本当にそうだろうか。

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