産経新聞前ソウル支局長と元記事「朝鮮日報」記者 微妙に違う言い分
産経新聞前韓国ソウル支局長・加藤達也氏が朴槿恵大統領について書いた記事が、韓国検察から「情報通信網法における名誉毀損」にあたるとして在宅起訴され、裁判にかけられる。その渦中の加藤氏に週刊文春が「独占直撃60分」のインタビューをしている。加藤氏は当然ながら「朴槿恵政権のメンツのために私を心理的圧迫で潰して、惨めに謝罪させようというならば、粛々と闘う」と話しているが、その通りであろう。
この件に対して、日本のメディアや言論団体、また韓国の野党からも批判の声が上がっているのも当然のことである。週刊文春は加藤氏の記事はセォウル号沈没という大惨事の中、国会で朴大統領の所在について答弁できなかった事実を指摘し、<朝鮮日報の「大統領をめぐるウワサ」という記事を紹介、独自の論評を加えたものだった>と書いている。
だからこの記事を問題にする朴槿恵大統領側がおかしいと言い立てるが、当該の記事を書いた朝鮮日報のチェ記者は、自分は男女関係という単語は用いてないし、(相手の)特定もしていないから、産経の記事とは主旨が違うと反論している。
難しい問題である。韓国は言論表現の自由を侵すのかと声をあげることは間違ってはいない。だが、他国の指導者を論評するときは、品位を落とすことなく節度をもって書くことが肝要なこと、いうまでもない。ましてや、書かれた相手が、これが事実だとしたら政治生命を失うかもしれない程の窮地にあるときはなおさらであろう。ましてや日韓の関係は戦後最悪といわれているこの時期である。今一度、感情的にならずにこの記事を両国民が読み直して冷静に考えるべきである。
日本の週刊誌や本には明らかに韓国を侮辱しているタイトルが多く見られる。これを韓国内で出版すればどうなるか。言論人は対立する国同士をなおさら離反させるのではなく、少しでも両国の距離を近づける努力をすることこそが本来の言論の役割であるはずである。週刊文春を読みながらそんなことを考えた。