東京の住宅街でマンホールを囲んで写真撮影をする女性の一群。いま「マンホール街歩き」がちょっとしたブームだという。火付け役となったのは大阪・豊中市に住むともに67歳になる池上修・和子夫妻だ。いつも刷毛を持ち歩き、蓋をきれいに掃除して撮影をするのが趣味という。北海道から沖縄まで歩き回って撮影したマンホールの蓋は3000枚にもなる。
「平成の大合併以前は市町村の数は3500ほどありました。その75%ぐらいを回りましたね」と和子さんは話す。歩いた距離は約8万キロ。地球1周という。
地方では町自慢のカラフルなデザイン
マンホールの蓋がなぜそんなに魅力があるのか。修さんは「都会にいるとただの鉄の蓋ですが、地方に行くと、歴史や自然など町の自慢をマンホールにカラーで描いてあるのが面白いんです」という。
夫婦が撮影した蓋を見ると、北海道・羽幌町の「オロロン鳥」、青森市の「ねぶた」、岩手・久慈市の「北限の海女」、福井・勝山市の「恐竜王国」、茨城・つくば市の「スペースシャトル」、京都・宮津市の「天橋立」、香川・高松市の「那須与一」と、まあ工夫が凝らされている。
池上さん夫婦がマンホールの蓋に魅せられたきっかけは、地元の豊中市内を友だちと散歩をしていて、「どうしてこの絵が描いてあるの?」と聞かれたことだった。ワニの化石が見つかったのを記念して、「マチカネワニ」の絵が描かれていたのだ。そこで「他の町にも珍しい蓋があるのでは」と街歩きが始まった。
夫婦が最も心を奪われたのは岡山・真庭市の「醍醐桜」だという。鎌倉幕府の倒幕計画に失敗した後醍醐天皇が、隠岐の島に流される途中で眺めたという桜の巨木を描いた蓋だ。趣味が高じて「デザインマンホール100選」という本も出版した。これが海外でも注目され、外国人ツアーガイドでマンホールの蓋が紹介されるまでになっている。