「報道ステーション」プロデューサーに自殺説、他殺説...熱心に福島原発取材
9月4日のこの欄で「テレビ朝日・古舘伊知郎の『報道ステーション』で、福島第一原発事故のことを熱心に調べていたプロデューサーが『自殺』していたという情報が入ってきた」と書いたことを覚えている方もいるかもしれない。その後どこもこの件に関して報じてなかったが、ようやく『紙の爆弾』(鹿砦社)が11月号の巻頭で「自殺した敏腕ディレクター フクシマ『最後の取材』」という記事にしている。
岩路真樹氏(享年49)がその人で、8月末に亡くなっている。警察は練炭による自殺だとしているようだが、真夏に練炭自殺とは...。ネットでは他殺説も流れているようである。
岩路氏は福島の汚染作業のずさんな実態や、県内で甲状腺がんが多発していることなどを担当していた。自ら現場に出向き、丹念に取材を重ねる人だったという。だが、取材をしても放映できないことも多かった。3月11日の放送で福島の甲状腺がん多発問題を取り上げたが、埼玉や千葉など広範囲で子どもたちの血液に異常な数値が出ているという話をした医師の部分がカットされたり、急性白血病を発症したという福島県の高校生の話も放送されなかったという。
自分が伝えたいことが伝えられないもどかしさ。除染作業などの下請けには暴力団の利権が絡んでいることもあり、時には身の危険を感じることもあったようだ。彼は福島で文部科学省が出している放射線量についても疑問を持ち、実際に福島で600もの線量計を設置した私の友人のところに「文科省の発表している放射線量には誤魔化しがあるのではないか」と聞きに来たことがあるが、結局それも放送されなかった。彼の死が自殺か他殺かわからないが、こうした国が隠蔽する不都合な真実に肉薄する真っ当なジャーナリストがまた一人消えてしまったのは痛い。