和歌山県のみなべ町議会で「梅干しでおにぎり条例」が可決され、10月1日(2014年)から施行されている。人口1万3000人のみなべ町は高級梅の南高梅の発祥地だ。国内産の梅の4分の1にあたる年間3万トンを生産する全国一の梅の産地である。
では、どんな条例か。第5条を見ると、「町並びに生産者、事業者及び町民は、『梅干しおにぎり』及び梅干し等梅製品の普及促進に関し...協力するよう努める」とあった。
地元でも若者は「シャケ」「ツナマヨ」「昆布」
罰則規定はないが、なぜいま頃になってという疑問がわいてくる。司会の夏目三久によると、「生産量は20年間落ちないのに、消費量が減っているのが問題なのです」
総務省の家計調査(2013年)によると、年代ごとの梅干し購入数量は、60代は950グラムと最も多く、30代は419グラム、20代274グラムと若い人ほど少なくなっている。みなべ町の若者たちに「好きなおにぎりの具は?」と聞いても、「シャケ」「ツナマヨ」「昆布」が圧倒的に多く、「梅干しは苦手です」なんていう。これでは心配になるのも無理はない。そこで条例をつくり、対策に乗り出したわけだ。
対策として町内の公立小学校の給食に毎日梅干しを無料で提供している。梅博士といわれている和歌山県立医科大の宇都宮洋才准教授は町民1300人の血液検査などの健康調査を行ったところ、梅を食べている人と食べていない人では、胃の健康状態が大きく異なっていることがあきらかになった。梅干しの成分が、胃潰瘍の原因となるヘリコバクター・ピロリ菌の増殖を抑える働きがあることが分かっており、実証された形だ。