「この国では、子どもたちの6人に1人が貧困にあえいでいます」
ショッキングなフレーズから始まったETV特集のテーマは「教育と貧困」だ。学習支援NPOに通う若者たちの肉声が貧困連鎖を解決することの難しさを物語っていた。
元高校教師の青砥恭さんらのNPO法人・さいたまユースサポートネットは、学校に通うことができなくなった青年たちに、交流と学習支援のための「たまり場」を無料で提供している。集まる若者の半数以上が、貧困の状態にあるという。
修学旅行にも行けなかった子ども時代
建設業界でのアルバイトをしながら通信制高校に通うアキラ(22)は幼い頃に父を亡くし、パートタイマーの母に育てられた。いまは母と兄弟の4人全員が働いているが、依然として暮らしは豊かにならない。働きづめの母に無理は言えず、塾や習い事はおろか、修学旅行にも行けない子ども時代を送った。
中学で勉強についていけなくなり、クラスで泥棒扱いされたことから不登校となる。中卒で働き始め建設現場などのアルバイトで食いつないでいる。稼ぎや労働環境の悪さから、「そんな仕事辞めた方が良い」と言われることもあるが、明日の保証がないのだから辞められない。働きながら卒業を目指してきた通信制高校も今年で在籍5年目。最近は「たまり場」からも足が遠のいてしまっている。
たまり場に来る若者の半数が途中で勉強を続けることを諦めてしまう。自分の中に潜むコンプレックスやあせりから、「できない」「わからない」と助けを求めることから逃げてしまうのだという。学校生活で「わからない」と言うと、「お前がだめだからだ」と否定されてきた子供たちは、さらけ出すこと、頼ることが総じて苦手な傾向にあるのだ。