タイで16人の子供を代理出産させていた日本人男性は、近くタイ当局に出頭して聴取に応じることを明らかにしたが、いま日本人が仲介業者を介して途上国など海外で代理出産を行うケースが急増し、「代理出産ビジネス」をめぐるトラブルも見受けられるようになっているという。代理出産は約20か国で認められており、日本でも法律では禁じてはいないが、産科婦人科学会が禁止している。
『非認可』のままでは実態つかめずトラブル増える
ある30代夫婦は代理出産の高い成功率をうたう仲介業者に230万円を支払い、複数の受精卵を渡した。しかし、業者からは代理母が妊娠しなかったというメールがあった。詳しい説明を求めても要領を得ず、返金されるはずの費用は払われていないという。
また、代理出産を請け負う女性にも被害が出ている。タイ人女性のクックさんは今年(2014年)、代理母を引き受けた。毎月バスで片道6時間かかるバンコクの病院での検査を業者から義務づけられたが、先月、そのバスのなかで出血した。病院に搬送されたが流産してしまった。後遺症の痛みと痺れで病院に通う日々だが、業者とは連絡が付かなくなり、報酬は打ち切られ、治療費も支払われない。
「病気などで子宮がない」「精子卵子ともに夫婦のものである」「無報酬」
不妊治療や出産に携わってきた日本産科婦人科学会監事の吉村泰典さんは、代理出産には「出産の健康リスクを他人に負わせる医学的な問題点、母胎を商品化するという倫理な問題点」があり、学会として反対してきたという。一方、現実として海外で日本人の依頼が増えていて、「わが国でもガイドラインを決めていかなければいけないのではないか」という方針に変わってきたそうだ。
そんななか、自民党のプロジェクトチームは代理出産を認める案を出しているという。病気などで子宮がない、精子卵子ともに夫婦のものである、無報酬である―の3条件を満たす場合に限り代理出産を認めるという内容だ。
吉村さん「まず、代理出産の是非を立法府で問い、認めるかどうかを決めていただき、その後でガイドライン作りをしていくことが必要ではないでしょうか」
*NHKクローズアップ現代(2014年9月30日放送「急増 代理出産~規制と現実のはざまで~」)