<海を感じる時>
本格女優の期待!市川由衣...ひどい仕打ち受けても体まかせる「70年代の少女」

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   1978年に18歳で群像新人文学賞を受賞した中沢けいの処女作を実写化した青春ドラマだ。女子高生・恵美子(市川由衣)が先輩の洋(池松壮亮)と出会い、突然唇を奪われて大人へと成長していく過程を描く。内容の過激さが話題を呼んだ原作を「ケータイ刑事(デカ)」シリーズの安藤尋が撮った。

見返り求めぬ性の深淵

(C)2014「海を感じる時」製作委員会
(C)2014「海を感じる時」製作委員会

   80年代に根岸吉太郎、荒井晴彦のコンビで映画化が予定されたが、原作者が拒否したため実現しなかった、約30年たってようやく映像化を果たした。原作が書かれた時代の空気を尊重してか、脚本は当時のものになにも付け加えることなく使用している。反時代的な作品といえるが、近年の邦画は予算が追いつかず、とりわけ美術面での時代錯誤感は顕著に表れてしまっている。製作側の「仕方ない」という妥協が画面に見受けられるのは、この映画に限らず残念だ。観客は金の工面や現場進行のことなど知る由もない。

   だが、「形式」の安っぽさを「内容」でカバーしている。恵美子を演じた市川由衣の存在だ。どんなにひどい仕打ちをされても男のために体を許し続けるという行為は、いまの時代では理解しがたいもので、滑稽なことなのかもしれない。

   ただ、恵美子にとって、それは「見返り」を求めない純粋な本能であることを市川由衣は表情、台詞の息づかい、佇まいと、細部にわたり示す。カメラの前で「芝居のようなもの」しか演じられない役者とは決定的に違う。原作やシナリオの読み方に違いがあるのではないか。

   体当たりの演技=過激な濡れ場などではない。彼女が原題「海を感じる時」という「海」を文学的表現や感覚で演技するという形式ではなく、この作品の真のテーマである「海=子宮」という内容をしっかりと理解し、受け入れ、恵美子に投影していることが最大の見どころだ。ジェンダーフリーを叫び続けることは、女性という存在に「見返り」を求めることなのだと本作は語っている。

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