いま世界に新たな巨大市場が生まれつつある。イスラム教徒を対象とした「ハラル」商品だ。ハラルとはアラビア語で「許されたもの」という意味で、イスラム教の戒律にそって処理された肉やアルコールをふくまない食材だ。食べ物だけでなく、化粧品やワクチン、女性の下着まで「ハラル」は求められる。
イスラム教徒は急増していて、2030年には20億人に達し、ハラルの市場規模は1000兆円の達すると予測されている。
国谷裕子キャスター「日本企業もハラル市場にチャンスを見出そうとしています。でも、ハラルの基準は明確ではありません。あるイスラム国家がこれはハラルではないと判断しても、隣国ではハラルということがあります。判断は宗教指導者に委ねられています。日本企業はイスラム教を理解し製造工程を見直すなど試行錯誤が続いています」
規準は各国バラバラ...宗教指導者がそれぞれ判断
アラブ首長国連邦のドバイは国民の暮らしが豊かになり、中間層の購買力が高まり、スーパーには大量の輸入品が並ぶ。イスラム教徒の買い物客は「ハラルマークがあれば安心してすぐに買い物できる」と話す。
ドバイにある日本料理店ではイスラム教の戒律に基づいて処理された高級和牛が人気メニューとなっている。高橋智寿オーナーシェフは「彼らはお金を気にしない」という。
オーストラリアのダボで羊の肉を輸出している会社は、イスラム教の戒律にしたがって肉を処理している。処理をするのはイスラム教徒の作業員で、イスラム教の教えにのっとった手順を満たしようやくハラルと認められる。
国谷「日本企業が中東市場で優位を保つためにはなにが必要でしょうか」
帝京大学経済学部の並河良一教授が解説する。「ハラルとしての認証を得るためには、原材料や生産ラインの衛生面に至るまで厳格な基準をクリアしなければなりません。さらに、ハラルの認証は世界的に統一されているわけではなく、国によって基準がまちまちで、それぞれに対応しなければならない難しさもあります。
製造工程の技術的問題なども含め、イスラム教の宗教的戒律を理解することが求められると思います」
中東でビジネスを展開している企業だけでなく、日本国内でもイスラム教の観光客向けに「ハラルラーメン」なども登場している。
ナオジン
*NHKクローズアップ現代(2014年9月22日放送「イスラム圏に商機あり~『ハラル』市場を狙う日本企業~」)