こんな日に限って...ということが起こるように世の中は仕組まれているのだろうか。某テレビ局の玄関でステキなおじさまプロデューサーにばったり会う。それも同じ日に立て続けに2人。局入りする時に鉢合わせしたのはドラマ系のプロデューサーだった。局を出るときにもう1人、バラエティー番組系のステキなおじさまプロデューサーに遭遇した。私の頭の中では、あの曲がヘビーローテーションでガンガン鳴り響いていた。私と同じ年齢になるぐらい世の女性に支持されているあの名曲だ。
「どうしてなっのぉ~、きょうにかぎってぇ~、安いサンダルをはいてた~」
はぁあ、情けない。そういやこないだ恋愛系サイトで「忙しくても男が切れない女の条件」みたいなモテ女条件を、いい年こいて見てしまったばかりだ。どれだけ忙しくても、女であることを忘れてはイカンと、ヘアスタイルに気をつけろとか、メイクはちゃんとしろとかグダグダ書かれていた。その中にあったのが、<自分の服装を鏡で見て、好きな人に逢いに行ける格好かどうかを判断せよ>というくだりである。なるほどねぇ、いつでも女は武装して商品価値を下げてはならないんだわ。
バタバタと準備もおろそかにいつも出かける私は、キレイさっぱり読んだことを忘れて、その日はスーパーに買い物にいくような格好で家を出てしまった。ダボっとしたチノパンにオーバーサイズ気味のパステルカラーのカーディガン。完全におばちゃんファッションだった。
ちょっとヒネッたコーディネート、上品さ、清潔感...
ステキなおじさまプロデューサーは2人ともものすごくオシャレさんだ。お金に物言わせたファッションではなく、ブランド名に縛られず、いいモノで身の回りの物を揃えていらっしゃる。どこか遊びゴコロがいつも秘められているような身だしなみ。上質な白いシャツに襟袖部分に色違いの糸が施されているジャケットなのに、スニーカーだったりする。カジュアルなチェックのシャツに流行りの足首が見える細身パンツに上質な皮靴だったりと、いつもどこかにヒネリがある装いだ。ヒネリがほどよくエッセンスとして利いていて、しかも上品で清潔な印象を与える。このヒネリと上品と清潔はオシャレさんの鉄則でもある。
そして考える。この3つが兼ね備えられている人は時間の使い方がうまいのではないかと。たとえば、ヒネリを考える時間の余裕、上品に過ごすとはそれなりに吟味していいモノと向き合える時間の余裕、そして清潔さは身辺をこぎれいにできる時間の余裕があるということだ。
クローゼットからつっこんだままのシワくちゃな洋服をとりあえず引っ張り出し、バーゲンで安物買いの大損をし、ドライヤーもろくに使わずパサパサの髪にチャチャっとメイクするだけの私には、到底そんな時間がない。そしていつも遅刻ギリギリで顔面険しく歩くハメになる。そう、大人の余裕がゼロ。酔っ払って仕事をする気をなくし、ナントカナルサで土壇場になってガタガタやって寝坊する生活態度がそもそもなっとらんのだ。それがファッションだけでなく、相手に与える印象を作り上げてしまっている。
件の恋愛サイトにあった<好きな人に会える格好かどうか>に関しても、身だしなみにそのぐらい考える時間をかけろと解釈できる。恋愛サイト見て文句言う前に、子供や夫に割く時間を持たない身なのだから、自分のための時間の使い方を一考するほうが、よっぽどいい年に見合っている。そうすれば偶然起こる残念なシチュエーションを必然的に減らすことが可能になり、ユーミンの曲がヘビーローテーションで頭の中で鳴り響くこともなくなるのかもしれない。
あっ、ちなみにステキなおじさまプロデューサーは名曲とは違い、元彼でもなんでもありません。
モジョっこ