iPS細胞使えば薬・治療もテーラーメード!その人の病態・症状に合わせて開発

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   iPS細胞を使った世界初の網膜細胞移植が行われたのに続いて、iPS細胞による新薬開発の成果が17日(2014年9月)に発表された。難病の患者の細胞から作ったiPS細胞で病状を再現し、それに効く物質を探し出すというまったく新しい手法だ。同じ試みはいくつもの病気で進められており、iPS細胞研究の奥行きはますます深くなっていくようだ。

手足の骨が成長しない難病に新薬

   新薬開発の対象は軟骨無成形症。遺伝子の突然変異で骨を作り出す軟骨細胞が正常に増えず、手足の骨が成長しないという2万人に1人の難病だ。取り組んだのは、iPS細胞の生みの親、山中伸弥教授の京大iPS細胞研究所の妻木範行教授グループだ。

   妻木教授らは病気を細胞レベルで再現するため、患者の皮膚細胞からiPS細胞を作り、変化させて軟骨細胞にした。細胞は当然、病気の遺伝子を持っている。正常細胞なら試薬で赤く染まるが、この細胞は染まらなかった。病気を体の外で再現したことになる。

   次にこれに効果のある薬の候補をさがす。さまざまな物質をテストして効果をみるという根気のいる作業だ。ここで意外な物質が見つかった。血液中のコレステロール減らしに広く使われている「スタチン」である。骨粗鬆症に効果があるというので試みて2か月後、試薬で正常に染まった。マウスでのテストでも、2週間の投与で骨の成長が認められ、正常なマウスと変わらないくらいになった。

   ただ、「スタチン」は大人用の薬だ。コレステロールを必要とする子どもへの投与はリスクがある。だから、まだ候補である。安全性、副作用を見極めたうえで、2年後の臨床試験を目指すという。

   山中教授は「最初に成果を見せられた時は、自分のiPS細胞を発見したときと同じくらい衝撃だった」「薬の開発には膨大な金と年月が必要という既成概念(マインドセット)を変える可能性を示す具体例ですから、嬉しかった」と話す。

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