出版業界で社員引き抜き当り前だけど...そこまでやるか「朝日新聞出版」!営業秘密持ち出し
もう1本、週刊文春の朝日批判の記事で気になるものがあった。簡単に記す。朝日新聞の子会社「朝日新聞出版」はもともと分冊百科の老舗として知られていた。最近この分野で苦戦していたため、分冊百科で成果を上げているデアゴスティーニ・ジャパン社(本社はイタリア)からK氏をスカウトしたという。
ここまではよくあることである。それ以来、K氏が持ってきたデア社の資料が朝日出版の会議で配布されるようになったという。その中から、K氏がデア社で出してお蔵入りになった企画が朝日新聞出版で出版されるようになったそうだが、これも許容範囲であろう。
しかし、K氏が持ち出していたのはこれだけではなかったようだ。パートワーク(分冊百科)の売れ行きの推移を集計した「逓減表」と、タイトルごとの売り上げと利益が示されている「売上表」まで持ち込まれ、朝日新聞出版内部で見られていたというのだから驚く。
パートワークというのは部数設定が難しい。創刊号は売れるが、2号目からは下がっていく。その際、適切に部数を減らしていくことが、このビジネスでは利益を確保する上で重要だし、「逓減表」はデア社が長年かかって蓄積したトップシークレットであるはずだ。
たつき総合法律事務所の秋山直人弁護士が指摘する。<「このケースは不正競争防止法の中でも、二条六項にいう『営業秘密』の不正取得に当たる可能性があります。(中略)民事訴訟を起こせば損害賠償を請求することもできます」>
週刊文春から資料を見せられたデア社の大谷秀之社長はこう話す。<「(逓減表は)重要書類です。他社に開示するということは絶対あり得ません。社内でも逓減表にアクセスできる人間は限られている」>
さらに顧問弁護士と相談すると苦り切った表情で語ったというが、それはそうだろう。出版社にとってパートワークの部数設定をするのは最重要課題である。それに2号以降はどういう下がり方をするのか、他誌で同じようなものを出したときのケースを参考にできれば、作りすぎや売り損じを減らせるかもしれないから、のどから手が出るほどほしいデータである。
これが事実で、デア社が告訴でもすれば、また朝日新聞出版社のトップの首が飛ぶかもしれない。朝日新聞のメディアにあるまじき不祥事はまだまだ出てくるのではないか。週刊文春、週刊新潮がともに朝日新聞の販売店が部数減に悲鳴を上げていると書いているが、朝日の悪夢の日々はまだ続きそうである。