東日本大震災で津波の被害を受けた東北地方の沿岸部では、いま新たなまちづくりが本格化している。もとより人口が減少していたが、震災後は著しい人口流出に見舞われている。宮城県山元町では人口が2割も減少し、一刻も早く流出を食い止めようと、新たなまちづくりの建設を急ピッチで進めている。完成は1年半後の予定だ。まちづくりのコンセプトは、インフラを集約することで行政側の支出を抑え、住民にとって安全で住みやすく活力のある「コンパクトシティ」だ。
しかし、新しいコンパクトシティに移転を希望する人は想定の3分の2にとどまっている。地区の住民世帯で丸ごと移転したい、すでに再建した農場の近くに住みたいといった希望を持つ人たちがいるからだ。その際、移転費用や道路の支援などは町は支援、援助はしないと決めた。
宮城県女川町では住民が参加して「将来もよかったと言えるまち」
宮城県女川町もコンパクトなまちづくりを目指しているが、こちらは「住民参加」型で進めている。まちづくり会議には町長や課長、住民、工事業者も同席する。住民から出た意見を採用するかどうかはその場で判断する。宮城県女川町長は「いまは苦労するかもしれないが、将来それが財政的なことも含めて、町にとって良いものになるのであれば、手間暇かけてでもやるべきだ」と語る。
都市計画が専門のゲスト、東北大学大学院の姥浦道生准教授は、「われわれがつくらなければいけないのは、長いスパンで見ていいまちづくりだったと言えるまち」と語る。「その意味では、いまの住民の方のご意見も非常に重要であり、また長期的で客観的な観点も必要だ。そのあたりのさまざまな意見、観点のバランスをどうとるのかが難しく、課題になる」という。
*NHKクローズアップ現代(2014年9月16日放送「復興コンパクトシティ~被災地が描く未来のまち~」)