マイケル・チャンから課せられた「大嫌いな反復練習」ブログに泣きそうです
錦織がテニスを始めたのはこの冬の時代だ。2003年に小学生大会で全国制覇して才能が認められ、13歳で奨学金を得て米のIMGアカデミーに単身留学した。世界中からエリートを集める育成施設で、生徒同士を競わせ、成績が悪ければ退学もある。
英語もできない、ホームシックもあった厳しい環境で、錦織はやはり体格差に苦しんだ。しかし、レベルが上の選手との練習が実を結び、2年後には同世代で最強の選手を破った。17歳でプロデビューして、翌2008年にはツアー初優勝。ランキングを駆け上がったが、2012年からは足踏み状態になる。世界トップ10の壁だった。
それが昨年12月、マイケル・チャンをコーチとしてからは世界が変わった。チャンは17歳で全仏オープンを制したアジア系の星だ。体格もプレースタイルも似ている。チャンが課したのは体力強化と基礎の反復練習だった。当時のブログに「10個以上直された。泣きそうですが頑張ります」と錦織は書いている。
小学4年から見ている松岡は「彼は才能があって感覚でやってきたから、反復練習が一番嫌い」(笑い)という。だが、このおかげで体力がつきミスが減った。相手が勝手にミスをする。これが自信になった。いま錦織は「大事な練習だった」という。ジョコビッチに勝ったとき、「自分の最高のテニスができれば彼らにも勝てると肌で感じ取れた」とまでいった。
ダブルスでグランドスラムを獲った杉山愛も「あの言葉はこれまでなかった。試合でも超トップのテニスをしていた。信じられない成長」という。この快挙が次世代にどう映ったか。松岡は「ジュニアの目が変わった。自分でも、日本人でもできるんだと感じるようになった」という。いまは留学しなくても12~14歳で半年以上もの海外遠征がある。
彼らに送る言葉として、杉山は「ビジョンを描いていくこと」、松岡は「誠実で素直で、信じる力があれば、世界は近い」と松岡節だ。
まあ、そんなカッコいいことばかりでもあるまいが、早くもテニス人口が増加する気配だと巷ではいっている。裾野が広ければ山も高くなる。遠からず第2、第3の錦織が出てくることを期待しよう。野球の大リーグだって、かつては夢のまた夢だったのだから。
ヤンヤン
*NHKクローズアップ現代(2014年9月11日放送「錦織圭 世界の頂点への戦い」)