朝日新聞の福島原発事故の吉田調書と従軍慰安婦問題に関する2つの記事に対し、木村伊量社長は会見し初めて謝罪した。吉田調書についての記事は今年(2014年9月)5月20日付朝刊1面トップに掲載された。「所長命令に違反、原発撤退」という内容で、政府が非公開としている吉田調書を入手したとし、東日本大震災4日後、福島第1原発のすべての電源が失われる危機一髪の状況の中で、「所員の9割にあたる650人が所長の待機命令に違反して10キロ離れた福島第2原発に撤退した」と書いた。
しかし、公表された調書によると、吉田所長は待機命令というより「線量の低いところに退避して待てといったつもり。よく考えてみれば全面マスクをしているわけで、何時間も退避していては死んでしまう。第2原発に行った方がはるかに正しいと思った」と話していた。命令違反という認識は持っていなかったのだ。
記事取り消しが20年後という怠慢
もうひとつは90年代初め、韓国・済州島で慰安婦を暴力で強制連行したとする故・吉田清治の証言に基づいて書かれた記事だ。記事が掲載された直後から現代史家やジャーナリストが虚偽の証言だと指摘してきたが、朝日新聞はその後も強制連行はあったとする記事を展開し、今年8月5日の特集記事で「一部に事実関係に誤りがあった」として記事の取り消しを行ったが、謝罪はなかった。
現実に進行している事象をどう評価するか難しい。判断ミスで誤報となる場合もある。今回の朝日新聞の記事で一番の問題は問題を指摘されながら、訂正、取り消しが遅れたことだ。とくに慰安婦の強制連行問題の記事が訂正されたのは20年後だった
菊池幸夫(弁護士)「日本は新聞大国だと思っていますが、これで新聞に対する信用が崩れ、社会に根本としてみんなが持っている共通の事実認識が分からなくなってしまいました。主義主張は別にして、その前提としての事実は裏を取って報道してほしい」
キャスターのテリー伊藤「自分の都合のいいように解釈していることが一番の問題だと思いますよ。それに対し疑問を持っているにもかかわらず、そのまま通してしまう。ここが朝日の一番の弱点。社内でここは違うのではないかと意見できない体質。ここだと思う」
司会の加藤浩次「テリーさんの言う内容は(社長の)会見でははっきりしなかった。なぜそうなったか。第三者委員会でその辺も明らかにしてほしいです」
木村社長は杉浦信之取締役(編集担当)の職を解き、自らの進退についても「抜本改革と再生の道筋をつけた上ですみやかい決断する」と語った。第三者委員会を立ち上げ国際社会に与えた影響などを含め検証するという。