玉川徹(テレビ朝日ディレクター)の「そもそも総研たまペディア」コーナーが面白かった。知ってないといけないお話だ。政府や原子力ムラは原子力発電は安いから使うと言い続け、だから九州電力の川内原発も再稼働させるとしている。ところが、経済産業省の総合資源エネルギー調査会・原子力小委員会は、「原発は高くつく」という前提で議論が行われていた。
論点は「原発の価格保証」だ。電力自由化の方向は決まったが、そのなかで原子力だけに価格保証を考えるという議論だ。玉川が原子力小委員会の委員で原子力資料情報室共同代表の伴英幸氏に聞いた。
政府・経産省が心配する「このままでは自然淘汰で原発ゼロ」
伴委員は「原子力は電力自由化と合わないですよ。コストが高い。原子力を生き残らせるためには支援が必要だということで支援策の議論をしています」と話す。
電力の小売りを全面自由化する「改正電気事業法」が6月(2014年)に成立した。これが電力自由化だ。従来はコストに利益を上乗せする総括原価方式で電気料金を決めてきたが、自由化によって市場が決めることになる。ただ、原発だけは特別扱いしようというのだ。
玉川「やっぱり高いということでしょうか」
伴「基本的には高いことが明らかになっています。放っておくと淘汰されるので守ろうということです。『差額決裁契約』といいます。市場の価格との差額を補填しましょうということですね」
玉川「だれが補填するんですか」
伴「第3者機関を作って、消費者から、電気料金から資金を集めるわけです」
玉川「結局、消費者が負担するということですね」
伴「消費者が負担する」
このシステムはイギリスで検討されている価格保証制度の引き写しらしい。原発電力の市場価格が基準価格を下回ると差額を利用者が負担する。原発コストが高くなった時を想定したものだ。
玉川「既存の原発を運転するのは安い。それを補填する必要はないのではないですか」
伴「新しく建てるために必要だということです。新しく建てるのが前提です」
宮田佳代子(ニュースキャスター)「とんでもない。なんでそこまでして守るの?」
松尾貴史(タレント)「電力自由化の意味がなくなってしまいますよ」
アメリカも電力自由化のあとは新規原発を造れなくなった。採算が合わないからだ。イギリスも北海油田が出て20年間造らなかった。それを「造る」ことにした。しかし、高くつくから「価格保証」制度で電力会社をバックアップしようというわけだ。
元経産省官僚の古賀茂明氏はこう解説した。「原発は安いと宣伝していたが、実は高いことを電力会社も経産省も知っています。だから、コストには触れずに『原発は大事だ』という結論から話を始めているんです」「エネルギー安全保障の話でも、高いとなると武器にはならない。『安い』と言い続けるしかないんです」
絵に描いた餅になりかねない「自由化で電気料金下がる」
玉川は経産省に聞いた。畠山陽二郎・原子力政策課長だ。「(イギリスは)ガス・電力の価格が非常に安いこともあって、中長期的に原子力が競争力を持つだろうかというのが主眼で、高いから補助しようというよりも、市場の中での安定を考えている」「少なくとも新設の原発は高いという認識はあるようです」と話だ。
ここでイギリスの価格調整のシステム導入について、玉川が「本音を明らかにしないのは、正直な行政とはいえない」と迫ったが、「具体的な制度を提案しているわけではない」
玉川「でも、(小委で)検討してくださいということは、意図があるわけでしょう」
畠山「議論の参考にはなると思います。テーブルには乗せましたけど、とくに意図はありません」
玉川「では、委員の方が原発コストが高いからというのは曲解ですか」
畠山「理解が正しくないと思いますので、正確に説明をしたい」
玉川「原発の新設が前提という点についてはどうですか」
畠山「必ずしもそうではない。いまは再稼働に集中していて、新増設は想定していないというのが基本ポジションで、新増設を見越した制度ということではない」
玉川「経産省は今後、新設という選択肢はないのですか」
畠山「わかりません。統一的スタンスは現段階では新増設は想定していない。以上でも以下でもない」
玉川「あくまで現段階?」
畠山「はい」
松尾は「現段階と言っておけば、、何が起きてもウソをついたことにならないですからね」
玉川「作るとも作らないともいわない。原発は高いともいわないんです」
赤江珠緒キャスター「でも、原発はやりますという強い意志を感じますよ」
玉川「原発を新設したいのなら、ちゃんと説明しろと...」
司会の羽鳥慎一「はっきりしないことは、はっきりした」
玉川「はっきりしてくれというのがまとめです」