<リトル・フォレスト 夏・秋>
橋本愛「あまちゃん」脱皮!東北の小さな村で自然とともに暮らす素敵と厳しさ…瑞々しい演技で出世作

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています
(C)「リトル・フォレスト」製作委員会
(C)「リトル・フォレスト」製作委員会

   東北の小さな集落・小森(リトル・フォレスト)を舞台に、畑仕事と野山の恵みで自給自足に近い暮らしをしているいち子の生活を描いた五十嵐大介の人気コミックの映画化だ。NHK連続テレビ小説「あまちゃん」の好演が印象深い橋本愛が主演、ナレーションも務める。

おいしそう…自生するグミやクルミでジャムや炊き込みご飯

   ここ数十年の間に急速に進んだ農畜産物の大量生産・大量消費システムで、私たちはスーパーやコンビニでいつでも好きなものを好きなだけ手に入れられるようになったけれど、「生きる=食べる」という当たり前の感覚が希薄になってしまったように思う。

   しかし、農業だけで生計を立てる人がほとんどの小森では、自分の食べるものは自分で作って生きるのが当たり前。さらに「料理は心を映す鏡」と語る母の影響を受けたいち子は、山に自生するグミやクルミも収穫し、作るときも手間を惜しまない。

   自家製パン、グミジャム、トマトスパゲティにアケビのサブジ風、クルミの炊き込みご飯など、次々とテーブルに並べられる旬の料理に、思わず「おいしそう」とうらやんでしまうが、そこでの暮らしは常に天候に左右され、虫や動物と対峙しながら「生」を勝ち取っていかねばならない。厳しい場面も同じくらいのボリュームで構成されている。言うなれば、エンタメとドキュメンタリーの中間のような独特の空気感が漂う作品だ。

5年前に家を出ていった母親から突然の手紙!「冬・春」編に波乱の予感

   派手なストーリー展開はなく、小森の春夏秋冬の移り変わりと、それに忠実に従い、生きる力を身につけていくいち子の姿がこの物語のすべてである。そこに5年前に家を出て行ったきり音信不通になっていたいち子の母・福子(桐島かれん)から手紙が届く。続編の「冬・春」編は2015年2月に公開が決まっているが、そこではこの親子の関係に大きな展開がありそうだ。

   諸々の事象・事件で「食べる」について考えざるを得ないいま、日本の自然の美しさや生きることの尊さを丁寧に伝えるこの映画は見ておいて損はない。

   橋本愛のみずみずしい演技は非常に印象的で、青春群像劇の「あまちゃん」とは別の次元で橋本にとっての出世作といえそうだ。

バード

おススメ度:☆☆☆☆

姉妹サイト