「今でしょ!」に敗れた代ゼミ―ところがどっこい、駅前一等地で不動産ビジネス
われわれの世代には懐かしい代々木ゼミナール凋落の話が『週刊現代』に載っている。代ゼミは全国27の校舎のうち、仙台、池袋、横浜など20校舎を閉鎖し、一部の全国模試も廃止するなど事業を縮小して、同時に40歳以上の職員の早期退職を募集すると発表した。
その理由として、少子化に伴う受験人口の減少や現役志向の高まりによる浪人人口の減少などの外部要因を挙げているが、週刊現代によれば<詰まるところは経営陣が先を読めていなかったため、事業縮小に追い込まれた形といえる>ようだ。
われわれが大学に入るときはそうでもなかったが、しばらく後から「一浪二浪は当たり前」の時代になり、予備校は高校と大学の中間の学校のようなものであった。少数制ではなく、どんな偏差値の低い者でもおいでおいでをして大教室に詰め込み、一方通行の学校と同じような講義をしたから、やる気のない人間は寝ているか早々に抜け出して遊びに行ってしまった。
それでも代ゼミというだけで浪人たちは集まってきたのである。だが、いまはどこでもよければ大学は簡単に入れる。しかし、それでは卒業してから就職先がないため、国立や理系を志望する者が多く、そのための少数精鋭塾が伸び、代ゼミが凋落していったのは必然だったのであろう。
創業者が亡くなったことも大きいという。だがこういう声もあるようだ。<「二代目の高宮英郎さんは、決して手をこまねいていたわけではありません。理事長に就任してから難関中学校受験で圧倒的な実績を持っていた『SAPIX小学部』を買収するなど、先を見据えた経営に舵を切っていました。ただ、ターミナル駅の一等地に巨大校舎を構えて、大部屋に何百人も収容して授業を行うという代々木ゼミスタイルが時代遅れになる中で、転換が遅れてしまったのもまた事実」(大手予備校講師)>
そんな代ゼミを横目に見ながら躍進したのは「今でしょ!」で有名になった林修氏を講師として抱える東進ハイスクール「ナガセ」である。
90年代初頭に30万いた浪人生が今では12万から13万人に激減しているのだ。<さらに、学生はリーマンショック後、学費が安い国立大学や就職に強い理系学部を狙う傾向を強めていった。多くの学生が、国立・理系に強い駿台や河合塾を選ぶようになり、私大・文系に強い代ゼミのニーズが急速に失われた」(亀井信明・高等教育総合研究所代表)>
ところがどっこい、経営が危ないという話が浮上してきてから、代ゼミは駅前の一等地に優良な土地を抱えているため、いずれ不動産業に転身するのではないかという声が業界内で出ているようだ。これも昭和の終焉を告げる出来事のひとつなのだろう。