「もうひとつの甲子園」と呼ばれながらも、注目度はいまひとつの全国高校軟式野球選手権大会が、甲子園顔負けの扱いになった。東海代表の中京(岐阜)と西中国代表の崇徳(広島)の準決勝戦が延長50回という4日間にわたる激戦となったからだ。2人の投手がずっと投げ続け、中京が勝ったが、いや驚いた。
投げ続けた2人の投手―松井大河709球、石岡樹輝弥689球
準決勝戦は先週28日の木曜(2014年8月)で決着し、金曜には決勝が行われるはずだった。ところが、延長15回で「ゼロ対ゼロ」でサスペンデッドになった。このときは、世間の注目度はまだ低かったが、翌日もまた15回で「ゼロ対ゼロ」となって、すごいことになってるということになった。「モーニングバード!」も黒宮千香子レポーターを送り込んで、延長31回からを見守った。
ところが、3日目に試合が始まっても、中京の応援団席に生徒たちの姿がない。予期せぬ延長戦で宿をとっておらず、前日4時間かけて岐阜・瑞浪市まで戻り、 この日早朝にとんぼ返りしたのだが、渋滞に巻き込まれて到着が遅れた。応援団が到着したのは午前11時だった。
黒宮が「45回を終わっても決着がつきませんでした。あすに持ち越されます」と話していて、これが土曜30日の収録だ。日曜のスポーツ紙は一斉にこの前代未聞の試合を「延長46回突入」「球史に残る」「世界最長」と、1面トップで伝えた。これでヒマ人が、いやいやファンがどっときた。
球場も甲子園ではない。兵庫・明石トーカロ球場は対戦校の応援団を除けば一般の入場者は多くない。その観覧席が人で埋まった。選手も必死だが、親たちも一緒に戦っていた。「ここまできたら気持ちよく」「きょうは勝ってほしい」
再試合ではなく延長戦だから、1度ベンチへ下がったらもう出られない。両チームとも1人の投手が投げ続ける。そして運命の延長50回、試合が動いた。疲れの見えた崇徳・石岡樹輝弥投手から中京はノーアウト満塁のチャンスをつかみ、先制打が出た。長いスコアボードに初めて3の数字。その裏を中京・松井大河投手がゼロに抑えて決着した。
松井投手のこの試合の投球数は709球。「笑顔で最後までみんなで楽しくやろうと思ってました」と話す。対する石岡投手は689球。「自分の意志で投げさせてもらって、マウンドは降りたくなかったです」といった。両チームの選手が駆け寄って互いをたたえる爽やかな幕切れだった。