オリジナル産地では高温に強い品種に切り替え
そこで、高温に耐える品種への切り替えの動きがある。温州みかんの愛媛・宇和島では、シチリア原産のブラッドオレンジへの転換が進む。宇和島での適温は16度だった。ところが90年代以降17度を超えて浮き皮などが起き、生産農家の減少もあって、生産量は最盛期の2割に落ち込んだ。
みかん農家の山内直子さんは温州みかんの畑を3分の1に縮小、ブラッドを7割にした。「温州だけでは子どもたちが続けられないから」という。2060年代には、温州みかんの適地は関東や北陸、東北南部にまで広がるとされる。
これを先取りして、山形県では4年前から温州みかんの試験栽培を始めている。夏の平均気温は12.9度で16度には遠い。味も「まだ酸っぱい」が、「30年経って、さあ、これからでは間に合わないですからね」
山形は日本一のサクランボの産地だが、日焼けや奇形のほか、温暖化で受粉の時期がずれ実そのものがつきにくくなっているという。「温暖化の影響が、こんなに早くくるとはね」。そのサクランボは北海道の富良野で試験栽培が始まっている。産地が北へ移動していく予感である。
杉浦氏は「適地の移動は、机上ではいえても実際は大変ですよ。植え替えには何年かのロスがあるし、勇気もいる。ただ、オリジナルの産地での収穫は減っていくだろう」と話す。
温暖化は急速だ。農家の負担だけでは乗り切れまい。行政がどうサポートしていくか。色が悪くても味がよければ、こんどは見栄えを優先する消費者の側の問題にもなる。見えないところで続く闘いを見えるようにする必要がありそうだ。
ヤンヤン
*NHKクローズアップ現代(2014年8月28日放送「異常気象に適応せよ~進む農作物の温暖化対策~」)