朝日新聞への投書。50歳の会社員からで、「娘と一緒に働いている全盲の方の盲導犬が傷つけられた」という内容だった。盲導犬は何があっても吠えないように訓練されている。それをいいことに虐待する人でなしがいた。
盲導犬はオスカーという名のラブラドールレトリバーのオスの9歳で、パートナーと職場に入ってきたとき腰のあたりが赤いのに周囲が気づき、犬のジャケットをめくったら血だらけだった。フォークのようなもので刺したらしいが、どこでやられたかはわからない。パートナーは「気づいてあげられなかった」と悔し涙を流す。
訓練通り吠えもせず職場まで案内!深さ1センチ4か所に刺し傷
パートナーの男性(61)は10年前に視力を失った。オスカーと連れ添って8年になる。「私の目であって、大事なパートナーです。体の一部ですね」という。先月28日(2014年7月)朝、オスカーとJR浦和駅から電車で職場へ向かった。職場で気づくまで、どこで何があったかはわからない。深さ1センチほどの傷が4か所あった。大事には至らなかったが、男性が受けた心の傷は深い。「もう人間不信になりましたね。なんで無抵抗なのに刺すんだろう」
盲導犬は生まれた時から、盲導犬になるべく訓練される。まず家庭で愛情いっぱいに育てられ、人間が大好きになる。成犬になると適性を見極めて訓練が始まる。目の見えない人の生活を支えるのだから訓練は厳しい。人混みや横断歩道、交差点を誘導し、電車やバスにも乗る。パートナーに危険が迫ったときにしか吠えない。食べ物もパートナーからしか食べない。ある意味、犬としての本性を殺して、人のために一生を捧げるのだ。1匹1匹にドラマがある。
しかし、近年、盲導犬に対する虐待は増えているという。たばこの火を押し付ける。マジックでいたずら書きをする。わざと尻尾を踏む…。盲導犬はそうしたときも声をあげないから、飼い主はその場にいても気づかないことが多いのだという。