1986年から約1年間「別冊マーガレット」で連載され、単行本は全4巻で700万部を売り上げた大ヒットマンガの映画化だ。主演の能年玲奈は「あまちゃん」の奔放な元気っ子キャラを封印し、孤独な14歳少女を演じた。相手役は映画初出演となる三代目J Soul Brothersの登坂広臣が抜てきされ、「ソラニン」「僕等がいた」などマンガ原作の映画作りに定評がある三木孝浩が監督を務めた。
大ヒット漫画の映画化!残念ながら失敗か…
唯一の家族である母親の愛を感じられずに育った和希(能年玲奈)は、ある日湘南の街で不良の春山(登坂広臣)と会う。春山は暴走族 「Nights」のメンバーで、バイクに命を賭け、死ぬことに平気な男だった。和希と春山は互いの心の空白を埋めるように惹かれあっていくが、Nightsのリーダーとなった春山は敵対するチームとの抗争に明け暮れる。
80年代後半の伝説的コミックをなぜいま映画化するのかという疑問を解消してくれるような『映画版ホットロード』を期待したのだが、残念ながら疑問はむしろ強まった。原作を壊してはいけないという強迫観念に作り手たちは支配されてしまったのだろうか、原作のダイジェスト的な展開含め、すべてが中途半端だ。
暴走族のリーダーに恋した和希は、原作では本来いるべき場所=学校内でのポジションに大いに影響を与え、居場所を求めるように恋を加速させていくのだが、映画ではなぞる程度にしか触れられていない。そのため、和希と春山の危うい恋はどこにでもある男女の恋にしか映らなかった。
ならば暴走族の世界が忠実に描かれているのかといえば決してそうではなく、彼らが「暴走」している描写は明らかに乏しい。
また、時代設定の曖昧さは致命的だった。和希らの制服のスカート丈の長さと携帯電話が出てこなかったから、おそらく原作と同じ80年代設定なのだろう。ただ、それ以外で80年代という時代を感じとれる演出がなされていないため、作品の世界にうまく入り込むことができない。あらゆる点で作り手の怠慢が目立った残念な作品である。
おススメ度☆
野崎芳史