木村伊量・朝日新聞社長は潔く辞任すべし!通用しない「虚偽証言は認めるが謝罪はしない」
私はもう一度朝日の当該記事を読み直してみた。吉田証言は指揮命令系統からも、当時、吉田氏がいたとされる済州島に陸軍の大部隊が集結する時期も事実とは思われないのだから、もっと早く虚偽だという判断はできたはずである。なぜ今なのかという疑問がわく。週刊文春によれば、木村伊量社長の判断だというが、木村社長は「ちゃんと謝ったほうがいい」という旧友に対して、「歴史的事実は変えられない。従って謝罪する必要はない」と答えたというが、これもおかしな話である。
吉田証言は歴史的事実ではなく、明らかな虚偽である。虚偽を報じたのなら潔く訂正して謝罪するのが当たり前ではないか。また、他紙も吉田証言を使ったではないかといういい方も見苦しい。
推測するに、安倍政権になって右派的論調が強まり、部数的にも苦戦しているのであろう。首相動静を見ていると、木村社長は安倍首相と何度か会っているから、直接苦言を呈されたのかもしれない。そこで弱った木村社長が決断したのではないか。だが、社内にはこの時期にこうしたものを載せるのは如何なものかという反対意見も多くあるはずだ。そこで、吉田証言が嘘だったことは認めるが、強制性に対してや植村記者の書いた記事に関しては「事実のねじ曲げはない」と強弁する、謝罪はしないということで手を打ったから、あのような中途半端な検証記事になったのではないのか。
しかし、これだけの大誤報を認めた以上、木村社長は謝罪会見を開き潔く辞任すべきだろうと、私も思う。その上で、日韓併合や植民地時代の苛烈な支配、原爆症で苦しむ朝鮮人被爆者や慰安婦たちの苦しみを、この誤報で帳消しにしてはいけないと主張するべきではないか。
戦時下で、多くの朝鮮人女性が甘言をもって慰安婦にされ、他人にはいえない苦労を強いられたことは歴史的事実なのだ。これから朝日新聞がやるべきことは、吉田証言とは別の軍の強制性を示す事実を総力を挙げて取材し、紙面で発表することである。
そうしなければ、右派メディアや論客たちによって、「強制性」についてはもちろんのこと、従軍慰安婦は自分から志願し、カネも自由もふんだんにあった悪くない『職業』にされかねない。
8月6日の朝日新聞で、父も祖父も太平洋戦争中に強制収容された日系人、米ジョージ・ワシントン大学教授のマイク・モチヅキ氏がこう語っている。<「多くの日本人がもう『もう十分だ。未来志向で行こう』と言うが、それを言うのは被害者の側であって、日本人はまず『私たちは忘れない。過ちを繰り返さない』と言い続けるべきだ」>
NHK BS1スペシャル「オリバー・ストーンと語る 原爆×戦争×アメリカ」でもオリバー・ストーン監督が概ねこう語っている。「記憶こそがわれわれを人間たらしめる『よすが』なのだ。自分が何を為したのかの記憶なくして人は後悔したり罪の意識を抱くことはない。歴史家が記憶を残すのはそれを忘れないためなのだ」
自分たちの父祖がやったことを決して忘れず、それについて考え続けることこそ、いまの日本人に最も必要であることはいうまでもない。