これは夏のホラードラマなのね。昔は夏たけなわになると「牡丹灯籠」とか「お岩さん」とか、定番の怪談がテレビにも出てきたが、やっぱりこんな形で伝統は生きていたのか。と言いたくなるほど、演出もホラー全開だ。
特に話題になったのは第4話のエンディング。いつも最後に「ぶわっさっ」と鳥の翼が開いて、真ん中に縦に「家族狩り」というタイトルが出る。これだけでも十分気味が悪いのだが、第4話では、これが出て「はあ、やれやれ、来週に続くのか」と思ったら、次の瞬間、薄暗い中でうずくまる女の子(中村ゆりか)の後ろ姿が映った。パンして顔がアップになると、その顔には禍々(まがまが)しいシマシマのペイントが。そして一転、色調が原色に変わり、見開かれた目玉とクワッと開けられた大きな口が真っ赤! ギャーッと叫んでしまった。
さらにその後の回では「ぶわっさっ」もパワーアップして、真ん中が大きなドクロに変わるようになった。
唯一ホッとさせてくれる登場人物「Kis-My-Ft2・北山宏光」
内容の方はというと、もちろん怖い。中心人物である児童心理司・氷崎游子(松雪泰子)、刑事・馬見原(遠藤憲一)の焦燥感と絶望感は見ていて息苦しくなってくるほどだ。二人とも、どうにもならない仕事と崩壊した家庭に追い詰められているのだ。
一方、高校教師の巣藤(伊藤淳史)も追い詰められているにはいるのだが、どこかのんびりしている。でも、彼を追い詰めて結婚を迫る同僚教師・紗弥加(清岡美歩)の方は常軌を逸していて怖い。馬見原の妻・佐和子(秋山菜津子)もホラー女だ。まだいる。ヤクザでDV男の油井(谷田歩)は人間離れした怖さを感じさせる。うまい、というか、所を得ている。そんな中で唯一ホッとさせてくれるのが巣藤の元教え子・渓徳(北山宏光)だ。北山くんはKis-My-Ft2のメンバーだが、演技がうまくなってきた。
演技力と言えばもう一人、情けない父親役の岡田浩暉はこのところすっかり情けない男役が定着した感があるが、元はバンドのボーカルでカッコイイ系のヒトだったはずだ。ここまでダメ男を持ち役にするとは見事だ。
評判は高いのに視聴率伸び悩みの不運
「この夏のクールでイチオシ」と言う人も結構いるのにあまり視聴率が伸びないのは、裏番組で「となりのトトロ」とか「借りぐらしのアリエッティ」とか夏休みの子供向けに大人気アニメ映画が放映されているせいだろう。また、佐世保の女子高生殺害事件など現実に悲惨な事件が起こると、「もう、嫌だ。ドラマでまで暗いのを見たくない」と拒否されてしまうということもあるのかも。(金曜よる10時~)
(カモノ・ハシ)