シリア北部の都市アレッポで過激派組織に拘束された日本人男性の実像が明らかになってきた。千葉市の湯川遥菜さん(42)と見られ、軍事会社代表としてシリア入りし、銃も持っていたらしい。反政府武装組織「イスラム国」は、湯川氏は傭兵で日本人スパイと断定する犯行声明を出した。取材中のジャーナリストやNGOの活動家と違い、解放は極めて難しいという見方が強まっている。
父親「息子に間違いない。タンカー護衛などをやる会社の実績つくると出かけた」
犯行声明は「イスラム国」がよく使うホームページ「ジハード」に掲載された。湯川さんの写真は所持品とともに公開され、携帯電話に残っていたとみられる映像もあった。動画は4、5月(2014年)ごろアレッポで撮影されたと見られ、湯川さんは「戦闘が続くシリアに来ています。護身用に銃を持っています」と語っている。銃を実際に撃つ練習をする姿もあった。
きのう17日(2014年8月)に取材に応じた父親によると、湯川さんはタンカーの護衛などをやる会社を立ち上げ、実績をつくるために6月に出発したという。「覚悟はあって、自分なりの考えで行ったのだろう。気をつけてと送り出しました。優しい子で、粗暴なところはありません。世間を騒がせて申し訳ありません。1日も早く帰ることが一番の願いです」
「イスラム国」の対抗勢力、捕虜交換で交渉?
ジャーナリストの後藤健二氏が湯川さんと交換した名刺には「民間軍事会社代表」とあった。その会社の関係者は犯行声明の映像を見て、すぐ「ああ彼だね」と認め、「シリアに薬を持っていくと喜ばれると言って出かけました。何回も話し合ったが、彼にすれば大きなビジネスチャンスと考えて、実績をつけて帰りたいという気持ちがあったのでしょう」と話す。何度かやり取りしたメールで、湯川さんは「まったく恐怖を感じることはない。戦場は肌に合っている」と語っていたという。
しかし、中東イスラム圏に詳しい敬愛大の水口章教授は「今月になってからアレッポでは戦闘が激しくなっています」という。外務省は邦人に避難勧告を出している。井上貴博アナは「現地では湯川さんの生存情報や反対勢力が捕虜交換による解放をめざすなどの情報がとびかっているようです」と伝える。
共同通信の久江雅彦・論説委員「サソリとムカデが血で血を洗う戦いを繰り広げている地域ですよ。(湯川さんは)認識が甘かったのではないか。日本は米国のイラク空爆を支持しています。国際政治では敵の味方は敵と見なされます」
井上貴博「日本人が狙われる可能性もなきにしもあらずということですね」