絵本から飛び出してきたような金髪碧眼の女の子と、ひと夏の交流を通して少し素直になる主人公―。美しい湿原を背景に語られる物語は、全体を通してすごく品が良い。ここまで「女の子」にターゲットを絞ったジブリ作品は、「魔女の宅急便」以来だ。夏休み公開にふさわしいさわやかさが香る。でも、「風立ちぬ」のような大人ジブリを期待して観ると、なんとも言えない物足りなさが残る。
自分も学校もお母さんもみんな嫌い
主人公の杏奈は気持ちを表に出すのが苦手な性格で、持病のぜんそくのせいもあり、学校では少し浮いた存在だ。冴えない自分を嫌うのと同じくらい、格好悪いクラスメートや育ての親を嫌っている。そんな様子を心配した養母は、夏休みの間、杏奈を札幌市の自宅から釧路の知人宅へ療養に出すことを決める。「やっかいばらいされた」と感じ、ますます殻に閉じこもる杏奈だったが、夜の湿原で出会った少女との時間を過ごすうちに、自分の弱さ、そして強さへ向き合うこととなる。
誰も住んでいないお屋敷から飛び出してきた少女の名は「マーニー」。一見、満ち足りたように見えるマーニーの生活を知るにつれ、杏奈は強いシンパシーを感じ、「一番のともだち」を自称するようになる。ところが、ある日を境にマーニーは姿を消す。マーニーはどこの誰だったのか…。正体が明かされたところで本編は大団円を迎える。
ひたすら爽やかで素直で美しい子どもジブリ
風景も人間もとにかく肌触りが良く、描かれる友情も美しい半面、ご都合主義的、人の感情の汚いところに踏み込んでいないという印象もぬぐえなかった。主人公が育ての母に対して不信感を抱くきっかけも、なんとなくピント外れというか、「そこなの!?」という感じ。大人からすると「そこなの!?」なポイントでも、子どもは大真面目というケースもあるから、一概に的外れとは言えないのだろうけれど、なんというかなあ、登場人物が素直すぎる。
血のつながらない子どもに無償の愛を注ぐ養母と、実の娘に贅沢な暮らしを与えつつも内心厄介者にしている実母。無知と潔癖さゆえにそれを突っぱねようとする養女と、愛に飢えた実の娘。このコントラストは確かに「対比の図」としては綺麗だが、人間ってこんなに割り切れるものだっけ?という違和感がどこかに残る。
養女だろうと、お腹を痛めた娘だろうと、母が娘を憎く思う一瞬は存在するのではないか。実の娘を厄介者にしている両親がひたすら「悪」として片づけられるのも、短絡的やしないか。娘を愛しているのも事実、一方で投げ出してしまいたいという思いに駆られたことがあるのも事実。そんな「揺らぎ」と「葛藤」からくる人間臭さをもう少しだけ見たかった。
とはいえ、ターゲット層が学童であることも考えると、えげつない人臭さを求めるほうが邪道なのかも。映画として良い悪いというより、大人ジブリと子どもジブリ、どっちが好みかで評価が分かれる一作です
(ばんぶぅ)
おススメ度☆☆☆