理化学研究所の発生・再生科学総合研究所(CDB)の笹井芳樹副センター長が首を吊って自ら命を絶った。疑惑を解明するSTAP現象の実証実験の途中になぜ死を選んでしまったのか。
上司の竹市雅俊センター長によると、笹井氏は英科学誌「ネイチャー」に掲載された論文に疑惑が指摘された今年3月(2014年)、心理的ストレスから体調を崩し約1か月入院したという。退院後の4月16日の会見では、「STAP現象は十分価値のある合理性の高い仮説だ」と語るなど自信を見せていた。
しかし、その後、共著者である若山照彦・山梨大教授から新たな疑惑が出されなど追い詰められた。7月にネイチャーが論文を正式撤回した際には、「STAPの整合性を疑念なく語ることは困難」とコメントを発表していた。
小保方晴子リーダーに遺書「あなたのせいではない」「新しい人生を進んで…」
関係者によると、小保方晴子ユニットリーダーに宛てた遺書には、「STAP細胞を必ず再現してください」という趣旨の記述があり、「あなたのせいではない」「新しい人生を一歩一歩進んでいってください」とも書かれていたという。
理研の改革委員会委員長を務める岸輝雄東大名誉教授は「小保方さんがSTAP細胞はある、笹井さんがSTAP現象はあると言っていた。その一人が欠けてしまった。この問題そのもののある種の幕引きを笹井先生が先導してしまったかなという気がしている」と語る。
宮崎哲弥(評論家)が「STAP現象の黒がだんだん大きくなっていったのだろうが、たとえ黒であったとしても、世界的な研究者としてまだまだ挽回できたはずですよ。この死は無念です」