神奈川県山北町の渓流のキャンプ場「ウエルキャンプ西丹沢」で、鉄砲水のような急な増水で母子3人が死亡した事故は、人災である可能性が高い。キャンプ場の運営業者は川の中州を大規模に埋め立てて、キャンプスペースを広げていた。このため、水かさが急激に上がったのではないかというのだ。
警察も業務上過失致死傷で捜査
事故現場に黒宮千香子レポーターがいた。丹沢山系の西にある小さな流れで、水量はわずかでどこでも歩いて渡れそうだ。こんなところでクルマまで流されたのかと、いぶかるほどのんびりとした場所である。
黒宮は中州を指して、「一段高いところに流木が打ち上げられてます。高さは1メートルから1.5メートルで、増水のときはあの上を水が流れたと言います」と報告する。
事故が起こったのは1日(2014年8月)午後8時半頃だった。雨で急激に増水したため、キャンプをしていた4人家族は4WD車で流れを横切って避難しうとしたが、車ごと流されて母親と子ども2人が死んだ。この中州は4WD車のキャンプ専用で、「アドベンチャーゾーン」と呼ばれていた。
事故の翌朝の写真をみると、皮肉なことに、一家が張っていたテントはそのまま残っており、逃げ出さなければ、あるいは中州の一段高いところへ逃げていれば無事だったかもしれない。それだけ水の増え方が急激だったということだろう。
その後の調べで、運営業者が無許可のまま中州を埋め立てて、川の流れを変えていたことがわかった。流れが絞られたため、水位の上がり方が急激だった可能性もある。08年から少なくとも6回、神奈川県の土木事務所から行政指導を受けていたが、従わなかったらしい。
県西土木事務所は「指導で川は元の形に戻っていると確認している」という。キャンプ場の運営に関して松田土木事務所は、「事業者の責任とキャンパーの自覚による『自由使用の範囲』」と話す。しかし、地元の人は「形は変わっていない。起こるべくして起った。人災です」という。 警察も業務上過失致死傷の疑いもあるとみて事情を聞く。