「打老虎(ダァラオフー)」というのだそうだ。老虎とは高級官僚のこと。これを叩け――中国共産党の最高指導者の1人だった周永康・前政治局常務委員(71)を「重大な規律違反」を立件する動きが急だ。規律違反は通常は汚職を指すが、今回はどうもそれだけではないらしい。
一族の蓄財1兆7000億円
周をめぐる噂は、厳しい報道統制のなか、昨年(2013年)の12月頃から流れていた。伝えられる不正蓄財の額は、本人と親族、側近合わせて1000億元(約 1兆7000億円)というから半端じゃない。石油事業、不動産業、金融業で周の政治力を利用して家族が違法経営をしたのだという。
その政治力はどうして得たのか。周は北京石油学院を出て、油田技術者が振り出しだが、40代で共産党に入党して頭角を現し、50代で初代国土資源相となって石油閥の利権を握った。07年には政治局常務委員に就き、胡錦涛政権では序列9位。公安担当として警察・検察・裁判所を所管した。
汚職・蓄財だけではない。13年8月に2度にわたって習主席暗殺を謀ったという。1度は会議室に爆弾、2度目は病院の検査に毒針というのだが、にわかには信じ難い。「妻を交通事故に見せかけて殺した」という報道もあった。
拘束されたのは親族、側近合わせて350人という。長男(42)は数千元で買った油田の開発権を5億元(約82億円)で転売、周が登用した公安省次官は元国営中央テレビのディレクターで、ここからテレビのアナウンサーまで汚職容疑で拘束された。行方不明の女性アナもいて、周の愛人だった―真偽不明の情報が飛び交っている。