今年6月、東京女子医科大学病院は会見を開き、入院患者の2歳児が手術後に4日間投与された鎮静薬「プロポフォール」という禁忌薬の副作用で死亡したことを明らかにした。プロポフォールは小児には投与が原則禁止されている。ただ、小児に対してはもともと使用できる薬が少ないため、症状などによって禁止薬を使うケースもある。
薬剤師から投与量多いと指摘されても継続
プロポフォールは人工呼吸器を装着する場合などに、体が動かないよう安静を保つための鎮静薬として使われるが、副作用のリスクが高く、大人でも1週間を超えて投与しないことになっている。しかし、東京女子医科大学病院はプロポフォールの危険性を認識せず、家族などにも知らせないまま、安易に漫然と投与していた。「プロポフォールをきちんと知らないで使っていたと思う。合併症などの対処法もとられていない」と病院関係者は話す。
医療過誤原告の会の勝村久司常任幹事は「小児には使ってはいけない薬を使うのであれば、その必要性、副作用などをきちんと説明して、家族の納得を得てスタートすることが必要だったのではないでしょうか」という。
病院の治療態勢にも問題があった。2歳児が手術後にICUに入ったとき、手術を担当した耳鼻咽喉科の主治医は、治療が長期になる可能性をICUに伝えず、治療もICU任せにしていた。ICUの医師はICU内での引き継ぎも不十分なまま、プロポフォール投与を続けた。この間、薬剤師から投与量が多いと指摘があったが、その後も投与が続けられたという。
80%の医療施設で子どもへの使用基準なし
東京女子医大病院によれば、プロポフォールの投与後に死亡した子供は2歳児のほかに12人いる。NHKN社会部の米原達生記者は「病気の重さや、薬を投与し終えてから亡くなるまでの期間があることなどから、病院側は因果関係はないと見られるとしています。外部専門家の調査を進めて、来月8月(2014年)に最終的な結論を出す予定です」と伝える。
しかし、今回のような問題は東京女子医大に限ったことではなさそうだそうだ。米原記者はこう報告する。「日本集中治療医学会のアンケートでは、約2割の病院がプロポフォールを使用したことがあると回答しています。そのうちの80%の施設では、子供の年齢や体重による使用基準がなく、85%は保護者に説明して同意を得ていませんでした。使用にあたっては、施設や学会できちんとルールを作るべきだと思います」
*NHKクローズアップ現代(2014年7月22日放送「幼い命がなぜ…~東京女子医大病院 医療事故の深層~」)