中国・上海の食品加工会社が使用期限切れの鶏肉を使っていた疑いがあるとして、日本マクドナルドはきのう22日(2014年7月)、輸入していた「チキンナゲット」を販売中止にしたと発表した。ファミリーマートも同じ会社から輸入していた製品の販売を取り止めた。
輸出していたのは上海福喜食品有限公司で、中国国内に10か所の工場を持つ世界でも最大級の食品加工会社で、親会社はアメリカのOSIグループだ。
床に落ちたチキンナゲットそのまま出荷
ことが明るみに出たのは中国のテレビ番組だった。映像には、工場の床に落ちているチキンナゲットを従業員が拾って再び製造ラインに放り込む場面が写っていた。別の映像では、床に落ちた食材の肉塊をバケットに戻すシーンもあった。さらには、ラベルに「5月30日製造、保存期間6日間」とあるのに、その製品が撮影されたのは6月18日だった。
番組には、廃棄される肉が使われたり、期限を7か月も過ぎた肉が製品になっていく様子も登場した。従業員は「期限切れを食べても死なないよ」と平然と言ってのけた。「購入元の審査に見せる生産報告書は改ざんされている」と元従業員は証言していた。
マクドナルドの輸入は2002年からで、関東・甲信越・静岡の1都10県1340店舗で売っていた。全販売量の2割にあたるが、21日から販売を中止した。ファミマは今月から売り出したばかりだったが、「ガーリックナゲット」「ポップコーンチキン」の販売をきのうから中止した。両社ともこれまでのところ健康被害はないと話している。
福喜の製品は中国のマクドナルドなどでも使っていたが、現在はすべて止まっているという。上海市当局も工場に立ち入って不正を確認したと発表した。しかし、内容は明らかにしていない。
従業員証言「上からの指示でやってた」
専門家は「氷山の一角だ。トップクラスの工場でこれだから、他の工場は推して知るべし。中国の工場のレベルをあらためて思い知らされた」という。中国事情に詳しいジャーナリストの富坂聰氏は、背景に貧困問題があるという。「少しでもお金を浮かせたくて必死になるような階層の人がなくならない限り、この問題なくならないでしょう。罰則をどれだけ強化しても有効に機能しません」という。
中国の食品問題はこれまでも、「偽粉ミルク事件」(04年)、「冷凍ギョーザ・メタミドホス混入」「粉ミルク・メラミン混入」「冷凍いんげん農薬混入」(以上08年)、「牛肉を水で増量した業者に有罪判決」「偽装牛肉(ネズミやキツネ)」(13年)と相次いでいる。
弁護士の野村修也は「信じられない状況ですよね。働いている人たちが基本的なモラルをもってない。制度をいくらつくっても、モラルを向上させないと…」という。
その通りだが、従業員の証言では「上からの指示」というのもあった。これにつける薬はない。「バレたら終わりだよ」「仕事も商売もなくなるよ」と脅すのが、とりあえずは効果があるのかもしれない。富坂氏がいう貧困がなくなることはないのだから。