成長神話、社会主義神話ではごまかせなくなった「中国社会のゆがみ」
稲盛哲学が注目されている理由を、日本総合研究所の寺島実郎理事長はこう見る。「いまの中国は日本の1980年前後だと思います。中国は成長によって経済のパイを拡大し、分配も進んできましたが、ここへきてバブリーな中国経済を引き締めざるを得ないところに来ています。あえて経済成長率を落とている。その結果、これまで成長スピードで隠してきたひずみやゆがみといった問題が表面化しています。経営者にとって、マネジメントして束ねる力がどんどん混乱し始めているんです。
社会主義をめざしていた頃は、あらゆる問題や矛盾は階級矛盾をこえた新しい国を作るために頑張らないといけないというメッセージで束ねていました。このメッセージが緩み、改革開放のもとに資本主義で中国全体を引っ張ってきた。しかし、中国経済全体に変調が起こり、経営者は今までの方法では神通力がきかなくなった。そこに稲盛氏が発信しているような経営スタンスが心に響くのでしょう。稲盛氏の経営哲学はイノベーション・リーダーとしての実績、成果があって、彼が語る経営論が心をうつものになっているのだと思います」
そうしたことは日本でもあるのではないか。いまだに成果主義を唱えて従業員を自殺するまでこき使う経営者、ブラック企業が幅を利かせているではないか。
ナオジン
*NHKクローズアップ現代(2014年7月21日放送「いま中国企業で何が?~日本式経営学ブームの陰で~」)