強姦・強制わいせつ被害女性「支援センター」進まぬ設置―誰にも相談できず長年の苦しみ

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   強姦や強制わいせつなど「性暴力」の被害者支援が動き始めている。県のセンター、NPO、これに被害者女性も加わる、ただ、加害者の8割が肉親か知り合いで、届け出(昨年1400件)は氷山の一角にすぎない。別の調査で、被害者の67.9%が「だれにも相談していない」と答えている。これを破るのは容易ではない。

社員旅行でレイプされたが…会社は「逃げなかったのが悪い」

   国は3年前、第2次犯罪被害者等基本計画で性犯罪対策として、「ワンストップ支援センター」を各県に設置・推進することを決めた。医療、心理的ケア、法的措置を1か所でできるという意味の命名だ。だが、これまでに設置されたのは16か所にすぎない。

   東京都内のワンストップ・センターは専門スタッフが24時間電話を受ける。病院、警察、弁護士との連携態勢も整っている。ここで救われた女性の例が、問題の所在をはっきり示していた。彼女は約1年前、社員旅行の宴会で酒を飲まされ、取引先の男性に強姦された。会社に訴えたところ、逆に「逃げなかったのが悪い」「旅行を乱した責任をとれ」と責められた。

   途方にくれたときセンターを探り当てた。「あなたは悪くないよと味方してくれた。うれしかった」という。翌日、産婦人科の検査を受けた。72時間以内なら薬で妊娠を避けることができる。感染症も調べた。心の状態もチェックし、会社との交渉に弁護士もついた。退職後、精神科に通院して、いまは別の会社で働けるまでに回復したという。もしセンターがなかったらどうなっていただろう。

   田中真生さんのケースがそれだった。沖縄にはまだセンターがない。小学5年生の娘が強姦された。相手は田中さんが再婚した夫だった。気づいたとき、娘は妊娠していた。しかし、だれにも相談できない。被害にあったことすらいえなかった。当時の日記には、「苦しい」「いっそ死んで」などの言葉が並ぶ。

   「相談できる場所があったら違った」と田中さんはいう。結局、1年3か月後、夫は逮捕された。これを機に田中さんは自ら名乗って体験を語り、沖縄県に「ワンストップ支援センター」設置を求めて署名運動を始めた。署名は1万人以上になり、来年(2015年)1月の設置が決まった。

   武蔵野大・小西聖子教授は「相談に来る人は、性暴力を受けてから平均して6、7年。この間どれだけ苦しんだか。早く支援を受ければ苦しむ期間を短くでき、半年か1年でまた動き出せるのですが…」という。

   ここでもカベは「いえない」ことだ。しかし、声を上げないと社会に伝わらない。小西教授は「虐待もDVも支援制度ができたから知られるようになった。性暴力はまだ制度ができていない」という。

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